こんにちは、モンブランです。
2日前の27日から読書週間が始まりましたね。これを機に、ちょっとした空き時間で本を読んでみるのも良いんじゃないでしょうか。
何でも良いんです。ガチガチの文芸書でも、ラノベでも。読みたい本を読みたいように読むのが精神衛生上よろしいんじゃないかと思います。そこに貴賤はありません。
そこで未定だった予定が現実になって、今回は最近読んだライトノベルの話をしたいと思います。
ヒアウィゴーでチェケラ!
女子高生二人のちょっと変わった日常と、それからのお話。
私は明日、この家を出ていく。しまむらと一緒に暮らすために。私もしまむらも、大人になっていた。
「あーだち」
跳ね起きる。
「おぉでっ」
派手に後退した私を見て、しまむらが目を丸くした。両手をおどけるように上げる。下りて目にかかる髪を払いながら、左右を見回して、ああそうだと理解していく。マンションに移り住んだのだった。二人きりなのか、これからずっと。
「よ、よろしくお願いします」
「こっちもいっぱいお願いしちゃうので、覚悟しといてね」私の世界はしまむらですべてが出来上がっていて、これからの未来になにも不安などないのだ。
どうした、しまむら!!??
と、困惑するくらいに、しまむらがちゃんと“彼女”をしていました。本編は8巻で完結しているということで、時系列が結構前後していますが、一貫しているのは安達としまむら2人の結びつきが強固なものになっていること。
その証として、安達との付き合いと並行して何となく交流の再開した樽見との関係に終止符が打たれます。
勿論、あからさまに別れる別れないという露骨な言葉は使われず、ただしまむらの方から「彼女がいるから」と告げただけ。
しまむらからして見れば、安達が妬くからごめんねくらいの認識。しかし、何とか取り繕いながらも涙を流す樽見を見て、「あれ? 樽見ももしかして……」と、しまむらはようやく気が付きます。
昔の親友から、再開した今の宙ぶらりんだった関係は二重の意味で“友だち”になれないまま、終わってしまいました。
さて一方、安達は母娘関係が微妙に進展したのが微笑ましかったです。
安達は昔から自分の感情を表に出すのが苦手で、母は母で何の反応もない娘の感情がわからない。いつしか母娘間で会話もなくなり、そのままの状態で社会人になる安達が家を出て行きました。
2人共この状態に後ろめたさを持っていなかった為、別れの日はあっさりとしたものでした。それでも、安達は出て行く直前に、母は娘が出て行った直後に「これで良かったのかな?」と、僅かに首を傾げたくらい。
冷めているというよりも、熱が生まれなかった母娘の後押しをしたのは、意外にもしまむらの母でした。
ほぼ偶然知り合った母同士は、しまむら母の図々しさ(?)もあって、友人未満な関係ができていました。
「娘はもうこの家に帰ってくることはないだろう」と言う安達母に、しまむら母は「だったら会いに行けば良いじゃない」と言い切りました。
あまりに正論過ぎて、返ってしまむら母にしか言えないセリフですね。安達母は「その発想はなかった」みたいなリアクションをしていましたが、意外とそんな将来もあるのかもしれません。
そんな感じですっかりED後感のあるこのシリーズですが、後書きによると12巻まで書かれる予定らしいので、嬉々として続刊を待ち侘びたいと思います。
(上巻)しのぶスーサイド
“儂が見るうぬの有様は、いつでも死に様ばかりじゃ”
デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターに会うため、
故国『アセロラ王国(仮)』を目指す忍野忍と阿良々木暦。
人間社会が異常事態に陥った中、
怪異にのみ感染するウイルスが吸血鬼を死に至らしめていて――?
これぞ現代の怪異 怪異 怪異!青春は、きみの隣で生きてこそ。
(下巻)なでこアラウンド
“おやすみなさい。いい夜と、いい夢を”
専門家の見習いとして、
斧乃木余接、貝木泥舟と共に西表島へ向かう千石撫子。
敵は蛇遣い・洗人迂路子――すべての元凶にして、臥煙伊豆湖の実の娘である。
撫子が挑む“死闘”の結末は――?
これぞ現代の怪異 怪異 怪異!ありがとう。また遭う日までが、青春だ。
まずは上巻から。
作中世界がガッツリコロナ禍になっていて、それだけに不死身の吸血鬼を死に至らしめる感染症の異常性が引き立っているように感じました。
そんな中、忍は自身を吸血鬼にした吸血主であるデストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター(長いから以下“デス”)の身に異変が起きたことを感じ、渡航規制のあるご時世にも関わらず、会いに行こうと試みます。
勿論、忍とペアリングされている阿良々木暦も同行することになるのですが、今の彼らは飛行機に乗れないし自分で飛ぶこともできません。そんな2人を導いたのは、不死身の怪異の専門家である影縫さんと斧乃木ちゃんでした。
影縫さんと言うと、偽物語で後にも先にもないほど阿良々木くんをボコボコにしていた暴力陰陽師のイメージが強いので、感染症というデリケートな問題に関わっているのは意外に感じました。
案の定、デスも感染症によって死に瀕していました。この感染症の原因を探り解決を目指す阿良々木くんたちでしたが、一連の流れを読んでいてやはり阿良々木くんはすっかり受け身になってしまったな、と思いました。
以前、どこかでも書いたように思いますが、近頃の物語シリーズは面白くなくなってきているように感じます。というのも、何をしでかすかわからない主人公が物語をグイグイと牽引してくれるのが面白かったのに、最近は不測の事態に巻き込まれてその解決に乗り出すタイプの話が多いからです。
『憑物語』での自身の吸血鬼化もあり、時間を経て無茶をせず大人になり始めた阿良々木くんの在り方は勿論正しい。でも、僕がこの作品に望んでいるのは、無理のない範囲でスマートな解決をするのではなく、がむしゃらに駆けずり回って意外な解決策を持ち出すような展開でした。
なので、改めて阿良々木暦の物語は『終物語』で終わってしまっていたんだなと思いました。
お次は下巻の撫子の話。
アニメの「恋愛サーキュレーション」で可愛らしさで人気を博した彼女も、蛇神化で一気に陥落。貝木の活躍もあって人間に戻り、誰にも言っていなかった本当の夢である漫画家を目指し始めた千石撫子の物語も今回で一区切り。
漫画家として自立する為に、並行して怪異の専門家見習いをすることになった彼女は、斧乃木ちゃん、貝木と共に全ての元凶である蛇遣い・洗人迂路子の元へ向かいます。
が、目的地である西表島行きの飛行機が落とされ、撫子は無人島に漂着、遭難することになります。ここのサバイバル生活描写はシリーズ屈指のつまらなさで、結構読み飛ばしていたのですが、斧乃木ちゃんとの再会後の洗人迂路子との対話では、撫子の成長を感じることができました。
思えば、モンスターシーズンの前のオフシーズンでも一番面白かったのは、撫子の成長の出発点になった『撫物語』でした。前進しているのがわかりやすいので、読む方もグイグイ引き込まれるんでしょうね。
ところで、貝木という詐欺師が中々ずるいキャラでした。『恋物語』で少女との相性の良さも判明し、嘘しかつけないクズなのに、言うことはカッコいいという憎めないキャラです。
今回の話でも、飛行機が途中で落とされたせいで引率役としては中途半端だったものの、冒頭や終盤でのやり取りはとても面白かったです。
この「なでこアラウンド」を読めただけでも、シリーズをここまで追ってきた価値はあったのかなと思います。
ちなみに、物語シリーズ恒例の次回予告は今回はありませんでした。シリーズを追ってきた我々読者一同にとっては結構な衝撃でしたが、その反面、これ以上書くこともないんじゃないかとも思いました。
既に『結物語』で社会人になった阿良々木くんも書かれているし、『死物語(上)』で阿良々木くんは大学を卒業しました。並行して書かれていた撫子の物語も『死物語(下)』で一区切り。『結物語』で“ツバサ・ハネカワ”になってしまった羽川翼の経緯も気になりはしますが、そちらはあまり知りたくない気もします。
ということで、書くことないなら書かれなくて良いんじゃね? というのが僕の個人的な意見です。
ついでに申し添えておけば、単行本以外の各所で書かれた短々編を1冊に纏めてくれたら嬉しいかなーと思ったり。
てな訳で、西尾さん、物語シリーズの執筆お疲れ様でした。
(1巻あらすじ)
高校生の浅村悠太は、親の再婚をきっかけに、学年で一番の美少女・綾瀬沙季と一つ屋根の下で兄妹として暮らすことになった。
互いに両親の不仲を見てきたため男女関係に慎重な価値観を持つ二人は、歩み寄りすぎず、対立もせず、適度な距離感を保とうと約束する。
家族の愛情に飢え孤独に努力を重ねてきたがゆえに他人に甘える術を知らない沙季と、彼女の兄としての関わり方に戸惑う悠太。
どこか似た者同士だった二人は、次第に互いとの生活に居心地の良さを感じていき……。
これはいつか恋に至るかもしれない物語。
赤の他人だった男女の関係が、少しずつ、近づいていき、ゆっくりと、変わっていく日々を綴った、恋愛生活小説。
ラノベの新規開拓をしたくて手を出したシリーズです。
最近流行りのなろう系に辟易していた僕にとっては馴染みやすい作品でした。
話の展開としては上記のあらすじの通りなのですが、結構展開運びはスローペースです。展開運びの速さを放棄した代わりに、人物描写と2人の距離の近付き様を丁寧に描いているのが感じられます。
義理の兄妹になるにあたっての2人の感想がとてもリアルです。いきなり同世代の異性と一緒に暮らすのは緊張するし、抵抗もある。でも、それぞれの親の幸せの為、一定の距離は空けつつ歩み寄ろうとしています。ギャルゲーのような浮かれようとは正反対ですが、実際にこういう状況になったらそう考えるだろうなと納得させられます。
最初の頃はそんな感じでしたが、一緒に暮らし、互いのことを知るうちに相性の良さに気付き、徐々に異性として惹かれていくことに2人とも気付いてしまいます。
3巻の頃にはその想いは明確になり、自覚もしてしまいますが、もしもこの想いを表に出せば親たちが望む家族としての幸せを壊しかねません。
そこで、沙季は1巻の時には拒んでいた「お兄ちゃん」呼びをすることで、線引きをしました。
親の再婚で自動的に成立した『義妹生活』から、自らの想いを封じ込めるために妹になることを選び取った『義妹生活』へと。
ここに来てタイトルの意味が変わったことに感心させられた反面、切ない気持ちになりました。
今年の冬に最新刊が出るらしいので、そこでこのモヤモヤが晴れるような決着を期待したいです。
さてさて、如何だったでしょうか。
本当はもっと読んでいたんですよ。『俺ガイル結』とか『楽園ノイズ』の最新刊とか『俺妹加奈子if』とか。
しかし、既に書いた分で紙幅は結構いっぱいになりましたし、実は現在進行形でコロナワクチン2回目の副反応で熱があるので、書くエネルギーが切れてきたのもあります。
なので、またいずれどこかの何かしらで書けたら良いなあと思います。
ではでは、今回はこの辺でっ!