モンブランは静かに暮らしたい。

静かに暮らしたいのに、好きなことの話をすると静かでなくなってしまうブログです。

晴れの日も雨の日も本を読みたい(10)

 こんにちは、モンブランです。

 桜が咲いて散って、GW(ガッ○ムウィーク)は瞬く間に過ぎ去り、初夏を感じさせる暑さに降りかかったかと思いきや、フライング気味の梅雨がやって来た今日この頃。皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか?

 僕はと申しますと、仕事が忙しかったり、シャドバの新弾でローテーションとアンリミテッドの両フォーマットグラマス7期目達成したり、仕事が忙しかったり、デレステで加蓮5周目が唐突に訪れてガシャの天井を叩く羽目になったり、仕事が忙しかったり、仕事が忙しかったり……。そんな風に過ごしていたら、気づけばもう5月も終わろうとしています。

 ブログのタイトルの「静かに暮らしたい」が願いの段階から中々現実に反映されませんが、何とか五体満足に暮らしております。

 小説もバチコリと書いております。

 漫画や小説もめっちゃ読んでおります。

 前回に引き続き、読んだ本の感想で紙幅を費やすことをお詫び申し上げようとしたところで、いや、これ別に自分のブログだから好きに書いて良いじゃん、ゴーイングマイウェイ、今回も好きに書かせてもらうぜ!

 

 

 

 

 

 

1.東野圭吾『白鳥とコウモリ』幻冬舎

 

二〇一七年十一月一日。
港区海岸に止められた車の中で腹を刺された男性の遺体が発見された。 被害者は白石健介。正義感が強くて評判のいい弁護士だった。 捜査の一環で、白石の生前、弁護士事務所に電話をかけてきた男、 倉木達郎を愛知県三河安城に訪ねる刑事、五代。 驚くべきことにその倉木がある日突然、自供をし始める――が。 二〇一七年東京、一九八四年愛知を繋ぐ〝告白〟が、 人々を新たな迷宮へと誘う—。

 

 東野圭吾さんの最新長編です。昔から東野圭吾さんの作品は沢山読んでいたので、今回もウッキウキで読書に臨みました。

 前作はコロナ禍の日本を描いていましたが、2017年なので今作は現代だけどコロナ直前の話ですね。

 上記のように、犯人が早々に自供して終わり……とはいきません。倉木の供述内容は筋道が通っていて、警察や検察はそのまま倉木を犯人として立件、起訴しようとしますが、その内容に違和感を覚える人物たちが居ました。

 1人は“殺人犯の息子”になってしまった、倉木の息子・倉木和真。父親が殺人犯である現実を受け入れられない、ということ以上に、供述にあった短絡的な行動に違和感を覚えたのでした。父親は殺人を犯すような人ではない。父親が供述する彼自身の人物像が、自分の知る父とは合致しない。

 もう1人は“被害者の娘”である白石美令。倉木の供述した殺人の動機は、殺害された白石弁護士に過去の犯罪を自首するよう迫られたことによるものでした。しかし、美令が知る父は、正義感は持ちながらもそれによって人を追い詰めるようなことをする人物ではありませんでした。

 つまり、立場は対照的でありながらも、2人とも倉木の供述には嘘があると思い、真相を追い始めます。

 一方は被害者の娘として世間からの同情を受け、もう一方は殺人犯の息子として非難を浴びる。この作品のタイトルにある“白鳥”と“コウモリ”はこの2人の比喩です。……大丈夫です、ネタバレになってません。

 タイトルの方は内容的にはそこまで重要ではなくて、読み終わった僕としては、帯に書かれていた次の言葉に大きな意味があると思います。

幸せな日々は、もう手放さなければならない

 これは一体誰が、どのような思いから発した言葉なのか。

 読みながら、そのことを考えてみるのも面白いかもしれません。

 結構分厚い単行本でしたが、いつものことながら、展開の速さと引き込まれる内容でグイグイ読めました。

 

 

 

2.杉井光『楽園ノイズ(2)』電撃文庫

 出来心で女装演奏動画をネットにあげた僕は、謎の女子高生ネットミュージシャン(男だけど)として一躍有名になってしまう。
 けどその秘密が音楽教師・華園美沙緒先生にバレてしまい、口止めでこき使われる羽目に……
 無味無臭だったはずの僕の高校生活は、華園先生を通じて巡り逢う三人の少女たち
「ひねた天才ピアニストの凛子」
「華道お姫様ドラマーの詩月」
不登校座敷童ヴォーカリストの朱音」
 によって騒がしく悩ましく彩られていく。
 恋と青春とバンドに明け暮れる、ボーイ・ミーツ・ガールズ!

 上記はこの本というより、シリーズ通してのあらすじになります。

 つーか、2巻が出るとは思ってなかった!

 1巻の時点でとても面白く、キリが良かったので続きは出ないかと思っていたので、発売早々に買って読みました。

 ラノベ特有のテンポの良さとキャラクター、そして巧みな音楽描写がこの作品の魅力です。……僕も一応は小説を書く身なのでわかるのですが、音楽を文章で表現するのってかなり難しいんですよ。聴けばすぐにわかるものを活字にして、尚且つ想像を掻き立てるように書かなければならないのは大変なんです。

 この時点で物書きとしては完全に白旗を上げつつ、純粋に読者として楽しんでました。オリジナルの曲だけでなく、実際にある音楽が沢山出てきて、読んだ後で聴いてみたくなります。

 あとは、ラブコメも王道を行く“鈍感主人公”のおかげで、実家のような安心感があります。今巻もほぼほぼ告白のようなセリフがありましたが、主人公は恋愛感情から来るものとは全く受け止めていません。ただ、恋愛方面を進め過ぎるとバンドが崩壊しかねないので、ちょうど良い塩梅になっていると思います。

 2巻を読んでみて、また続刊が出そうな雰囲気があるので、楽しみにしています!

 

 

 

2.夏川草介『臨床の砦』小学館

「この戦、負けますね」
敷島寛治は、コロナ診療の最前線に立つ信濃山病院の内科医である。一年近くコロナ診療を続けてきたが、令和二年年末から目に見えて感染者が増え始め、酸素化の悪い患者が数多く出てきている。医療従事者たちは、この一年、誰もまともに休みを取れていない。世間では「医療崩壊」寸前と言われているが、現場の印象は「医療壊滅」だ。ベッド数の満床が続き、一般患者の診療にも支障を来すなか、病院は、異様な雰囲気に包まれていた。
「対応が困難だから、患者を断りますか? 病棟が満床だから拒絶すべきですか? 残念ながら、現時点では当院以外に、コロナ患者を受け入れる準備が整っている病院はありません。筑摩野中央を除けば、この一帯にあるすべての病院が、コロナ患者と聞いただけで当院に送り込んでいるのが現実です。ここは、いくらでも代わりの病院がある大都市とは違うのです。当院が拒否すれば、患者に行き場はありません。それでも我々は拒否すべきだと思うのですか?」――本文より

 嫌なことから逃げるのは良いけれど、目を逸らすだけではいけない。

 今コロナのニュースを見ない日はありません。見ていて楽しい気分にはなりませんが、生活に大いに関わるだけに、見ないわけにはいかない。

 そんなコロナのことをわざわざ小説でまで読みたくはないと思う方は少なくないでしょう。ただ、コロナのニュースを見て“なんとなく不安”になったり、“なんとなくストレス”に感じたりする人こそ、読んだ方が良いと思います。

神様のカルテ』でも有名な作者の夏川草介さんは、現役の医師でもあり、コロナ禍の最前線で闘ってきた1人です。だからこそ、この作品にはフィクションでありながらドキュメンタリーを思わせるような臨場感がありました。

 この作品を読んだ後、きっとコロナのニュースの見方が変わると思います。

 例えば、「病床使用率30%」を多いと見るか、少ないと見るか。

 例えば、クラスターが起こった時、病院現場ではどのくらいの医療スタッフが動かなければならないのか。

 誤解をしないでいただきたいのですが、この作品は「経済よりも医療を優先すべき」というメッセージを発しているわけではありません。ただ、中々表に出せない(出す余裕もない)医療現場の最前線を描くことで、自分たちがどのように考えるかが委ねられています。

 蔓延する他人からの意見や情報に振り回されずに、自ら考え、行動することを促されているように、僕は感じました。

「読むべき」という強い言葉はあまり使いたくないのですが、人に強く推したい作品です。

 

 

 

 

 

 

 

 さてさて、いかがだったでしょうか。忙しい合間を縫って、結構本読んでるでしょう。慢性的な活字中毒を患っているのでしょうがないんです。

 他にも神林長平さんの『ライトジーンの遺産』とか読んでいたり、漫画でも『推しの子』がやっぱり面白かったり、近々出る『葬送のフリーレン』の新刊を待ち侘びていたり。

 労働という“動”の時間だけでいっぱいいっぱいにならずに、“静”の時間たる読書タイムを大事にしたいですね。

 やっぱり、僕は静かに暮らしたいので。

 

 ではでは、今回はこの辺で!

晴れの日も雨の日も本を読みたい(9)

 こんにちは、モンブランです。

 ……お久しぶりです。最後に更新したのが1月の下旬だったでしょうか。それ以前もよく前書きで「忙しい」と言っていたような気がしますが、今はその比じゃないほど仕事が忙しくて、余暇の中からブログを書く行為が消え失せたまま2ヶ月ほど経過してしまった次第です。

 僕のことをまさかブログで生存確認している人は居ないでしょうけれど、大丈夫です、生きてます。

 仕事で忙しくしつつも、デレステやシャドバやってたり、小説書いてたり、シャニマス始めてたりしてるくらいなので。

 勿論、本も読んでました。割ける時間が少ないせいで、量は流石に減りましたけれど。

 ということで、最近読んだ面白かった本の話をします。どーん。

 

 

 

1.伏見つかさ俺の妹がこんなに可愛いわけがない(16)黒猫if 下』電撃文庫

 

 黒猫が幸せになってくれて満足です!!!!

 という一言に尽きるのですが、流石にそれだけだと不親切なので、もう少しちゃんと語ります。

 本編で桐乃がアメリカに行った後、京介に自分のオタクコレクションを捨てるよう連絡して来ない世界線が、この黒猫ifになります。

 上巻のゲー研合宿を経て付き合うことになった京介と黒猫は、周りにも祝福されつつ、時々痛々しくも初々しいカップルになっています。本編だと8巻あたりのエピソードを彷彿とさせますね。

 “運命の記述(デスティニー・レコード)”や神猫などにも懐かしさを覚えつつ、嫌な予感が拭い切れません。

 “運命の記述”は付き合ってから2人でやりたいことを書き綴ったノート。本編ではその中に、

「先輩と別れる。」

 というものがありました。黒猫としては京介への好意と桐乃への友情の板挟みだったんでしょうね、昔リアルタイムで読んでいた時はひっくり返ったものです。

 ただ、本編の時とは“運命の記述”にまつわる大きな違いがありました。

 黒猫ifの京介は、

「“運命の記述”……いっちょ俺にも書かせてくれよ」

 と、積極的な姿勢を見せるのです。本編だと“運命の記述”は黒猫1人で書いていたので、ノートには言わば彼女1人の理想郷がありました。しかし、そこに京介の意思と願いが加わることで、やがて来る大きな分岐に新たな結論が出されます。

 本編で打ちのめされた黒猫推しの方、あるいは少しでも黒猫を不憫に思った方にはぜひぜひ読んでもらいたいです。

 僕的にこっちが本編で良かったんじゃないかと思ったくらいでした。ハッピーエンド万歳。

 

 

2.スティーヴン・キング『書くことについて』小学館文庫

書くことについて (小学館文庫)

書くことについて (小学館文庫)

 

 

 当時中学生くらいの頃だったでしょうか、図書館で旧訳版の『小説作法』を読んで、僕はとても感銘を受けました。一時期、こういう文章を書くための本を色々と読み漁っていたことがあったのですが、今でも頭と心に残っているのはキングの『小説作法』だけでした。

 最近になって、ふとまた読み返したくなり、古い本なので新訳版が出ていないかと思い調べてみたら、何とまあ8年前に出ていたじゃありませんか。

 こういう時はノリと勢いに任せるのが吉だと、僕はそのままその脚で本屋に向かい、バチコリと購入しました。

 旧訳版との違いは流石に思い出せないのですが、内容は大きく変わっていないように思えます。

 前半はキング本人の生い立ちや、作家になる前からの、本と書くことへの向き合い方が書かれています。特に奥さんとのことが丁寧に書かれていて、奥さんが居なければ“現代トップクラスのストーリーテラースティーヴン・キング”は居なかったでしょう。そう感じられるほどに、奥さんへの感謝が綴られています。

 ……実際、キングは一時期ドラッグや酒で廃人寸前でしたからね。優れた作家と人格者であることがイコールで結びつかない、典型例です。

 後半はかなり実践的なアドバイスが書かれています。

 勿論、彼は英語圏の人なので、日本のように文字数では語数を意識しているなどの文化的な違いはありますが、とても参考になる内容ばかりでした。

 物書きの人に限らず、“書くことについて”一度じっくり見つめ直したいと思う人、スティーヴン・キングに興味のある人にはオススメの本です。

 堅苦しいハウツー本ではなく、有名作家からの面白い授業を受けているような感覚で読めるので、お気軽に手に取ってみてください。

 

 

 

 さてさて、いかがだったでしょうか。本当は最近出た『かがみの孤城』の文庫版なども読んでいたりするのですが、字が大きくて読みづらいとか文句を垂れそうなので割愛。

 あとは、漫画もよく読んでいました。今年のマンガ大賞を受賞した『葬送のフリーレン』や、『乙嫁語り』の最新刊などなど。その辺りも、いずれブログに書くと思います。

 そんなこんなで、シャドバの新弾リリースを待ちつつ、今回はこの辺で。

 アリーヴェデルチッ!

小ネタを集めてみた(3)

 こんにちは、モンブランです。

 明けましてご無沙汰しております(汗)

 年末年始は忙しく、しかも仕事の方が繁忙期だったため、徒然なるままにブログを綴る余裕がなかったのです。先ほど「あ、今月まだブログ書いてない⁉︎」と思い出したくらいで。

 という訳で、まとまった内容を書けないため、例によって日常の小ネタをお届けできればなーと思う次第です。

 はい、どーん。

 

 

1.ノワールとは⁉︎

 

 デレステPたちを騒然とさせた、シンデレラフェスの分割と新たな『ノワール限定アイドル』の登場。

 しかも、その最初のアイドルが他の誰でもない、僕の担当アイドル・高垣楓さんだったのです。……それを知ったのは仕事上がりの夜だったため、いや、そうでなくとも、驚きのあまりひっくり返りました。

 完全に油断していました。彼女のSSR4周目の登場からそこそこ期間が空いていたとは言え、まさかそんなすぐに他のアイドルたちを差し置いて5周目が来ることはなかろう、と。

 高垣楓という存在を舐めていたと言わざるを得ません。

 お正月のデレステのCMに登場していて浮かれていたのに、あまりに供給過多というものです。

 性能も何も関係ない、手に入れなければ! そう決意した僕は天井を覚悟した上で、彼女を引きに行く備えを急ピッチで進めたのでした(要はコンビニへ駆け込んだ)。

 そして。

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 そこまで財布に深い傷を負うことなく手に入れることができました! 助かった!

 特訓前からこの顔の良さ!美しさ!だったのですが、特訓後の破壊力がすごいのなんの。25歳児とか呼ばれていた人とは思えない、大人の色気を前面に押し出した衣装。そして、挑戦的なセリフ。

 高垣楓の新機軸をそこに見ることができました。

 正直まだ「ノワールとは⁉︎」という感じなのですが、これから実装されるノワールアイドルも、アイドルたちの新しい魅力を引き出してくれることを望みます。

 そして、楓さんのパンツ系SSR衣装をずっと待ち続けます。「Nation blue」の衣装めっちゃ良かったんだって。

 

 

2.久しぶりにエラリー・クイーンを読んでるよ

ギリシャ棺の謎【新訳版】 (創元推理文庫)
 

 

 どんなに忙しくても読書欲は旺盛。ということで、以前にも読んだことのあった国名シリーズの内の1冊を新訳版で読んでみることにしました。

 相変わらず登場人物がワチャワチャしていて、無駄に冗長かつ癖のある文章で、にも関わらず推理運びは美しいというクイーンのテイストを味わうこと現在進行形です。時間があまり取れなくて、そこまで快調に読み進められてはいないのですが、休日にゆっくり読む時間が取れたらなと思います。

 ちなみに、クイーンと言えば、推理小説の定番とも言える『読者への挑戦状』がありますよね。文中に挟まれ「以上の手がかりを元に、この中で誰が犯人かを当ててみたまえ」的な。アレを額面通りの挑戦と、あるいは挑発と受け取る方も多いかと思いますが、そうではないという意見もあるのはご存知でしょうか? 僕もそうではないという意見に賛同する立場で、『読者への挑戦状』はその作品を完成させる上で必要な要素だと考えています。

「作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に真の解決かどうか作中では証明できないこと」、言い換えれば「作中で犯人を絞るための手がかりが全て出揃っているという保証を、作中で誰もすることができない」というのが、“後期クイーン問題”と呼ばれるものの一部にあります。

 これはつまり、探偵が見落とした手がかりがあって、それによって別の真犯人が浮上する可能性を否定できないということでもあって、作品が成り立たないレベルの大問題なのです。

 手がかりもそうですが、逆に手がかりが全て揃っているものとして、「犯人としての条件を全て満たした人はAさんしか居ない」と消去法的推理をした時に、本当はもう1人、犯人としての条件を全て満たしたXさんが居て、その人こそが真犯人なのだ、という可能性もまた否定できない、という場合もあります。

 ……ちょっと回りくどい言い方になってしまいましたね。要は、推理小説は一つの解を導き出すには自由度が高過ぎる文章題だと思ってくれれば良いです。

 そして、以上の問題を快刀乱麻を断つがごとく解決してくれるのが『読者への挑戦状』なのです。

 先ほど言いましたね、挑戦状の例文として「以上の手がかりを元に、この中で誰が犯人かを当ててみたまえ」と。この文章から読み取れる事実があります。

・犯人を指す手がかりは挑戦状が出された時点で全て出揃っている。

・犯人候補も全て出揃っており、以降の展開で未知の犯人Xなる人物が登場することはない。

 これを作品世界における神的存在である作者が、挑戦状を提示すると同時に上記の事実を保証しているのです。数学の文章題でも解を絞るために但し書きがあったりしますよね、アレと同じ役割を持っています。

 江戸川乱歩は『読者への挑戦状』のことを読者に対する“騎士道精神”と称していますが、どちらかと言えば必要に迫られて、“論理的要請”によるものなのではないでしょうか。

 ……ただ、これはあくまで捉え方の一つであって、他の全ての捉え方を排除できる真実だとまでは思っていません。むしろ、色んな捉え方ができるから面白いとも言えます。

 案外「読者が当てずっぽうで犯人を言い当てても、作者は痛くも痒くもないよ、へへーんだ!」と舌を出しているのが真相かもしれませんし、「この謎解けるものなら解いてみやがれ!」と謎解きゲームを仕掛けて楽しんでいるのかもしれませんし、まあ本当のところはわかりません。

 ミステリ以前に、小説は自由に楽しむのが一番です。故に、僕も久しぶりのクイーン作品を自由に楽しみたいと思います。

 

 

 

 

 さてさて、いかがだったでしょうか。小ネタをいくつかと思っていたんですけれど、意外と楓さんとクイーンだけで結構書けてしまいました。

 特に、クイーンについては半分寝起きの頭で書いていたので、自分の書いていることにこそ矛盾がないか不安になってきましたが、そこはもう投げっぱなしジャーマン。寛大な心で受け流してください。

 

 次のブログはもうちょっとちゃんと書けたら良いなと思いつつ、今回はこの辺で!

今年の推し漫画2020

 こんにちは、モンブランです。

 ……え、12月ってもう終わるの? 早くない?

 年末の人々の慌ただしさから「師走」とも呼ばれるこの時期ですが、人々よりも月日の方が全力疾走しているかのような感覚を覚えます。

 今年は世間的にもプライベートでも共に色々なことがあったので、来年はもう少し落ち着いて過ごせたら良いんですけどね。

 ブログ名からして「静かに暮らしたい」ですから。

 

 

 さてさて、今回は今年読んだ漫画の中でも、一際推したい作品を紹介したいと思います。

 

1.赤坂アカ横槍メンゴ『推しの子』

「この芸能界において嘘は武器だ」 地方都市で、産婦人科医として働くゴロー。芸能界とは無縁の日々。一方、彼の“推し”のアイドル・星野アイは、スターダムを上り始めていた。そんな二人が“最悪”の出会いを果たし、運命が動き出す…!?

かぐや様は告らせたい』の赤坂アカ先生が原作、『クズの本懐』の横槍メンゴ先生が作画を担当するという、最強タッグの漫画です。

 連載開始前から期待大でした。両方のファンだったので、“ぼくのかんがえたさいきょうたっぐ”かと思ったくらいです。

 ……実際に最強に面白かったので、今こうして推し漫画としてご紹介しているんですけどね。

 内容について、もう少しだけ掘り下げていきます。

 

 アイドルと産婦人科医の“最悪”の出会い……つまりは、アイドルの妊娠です。父親はアイ以外は知らず、周囲の反対にも引き下がらず彼女は子どもを産む気満々。推しアイドルの妊娠で落ち込むゴローでしたが、アイの強い意志に押されて、医者として無事に出産できるよう支えることを決意します。

 しかし、どこからかアイの妊娠を嗅ぎつけたストーカーが現れ、アイを守ろうとしたゴローは命を落としてしまいます。

 その後、アイは無事に双子の赤ちゃんを出産できました。双子の兄妹の兄には前世の記憶がありました……そう、アイの妊娠中に命を落としたゴローがアイの子どもに転生していたのです。

 

 ここまででも充分お腹いっぱいな内容でしょう。しかし、あくまで上記の内容は第1話分だけ、いわばプロローグに過ぎないのです。

 “推しの子”という立場から芸能界に関わることでアイを支えたり、時に自身が芸能の仕事に関わったり、双子の妹も実は転生していたり、先の読めない展開が続いていきます。

 そして、1巻のラストには読んでいて思わず「えっ⁉︎」と声が出てしまったほどです。

 現在2巻まで発売されており、巻数も重なっていないため、手に取りやすくなっているかと思います。

 ぜひぜひ読んで欲しいです。『推しの子』オススメです!

 

 

2.くゥ『少女漫画主人公×ライバルさん』

木村さんと檜山さんは水嶋くんをめぐる恋のライバル…!のはずが!?
私、木村ほのか。地味で目立たない高校一年生。そんな私だけど、好きな人がいるの。水嶋蒼くん――人気者の彼は私には手が届かない存在…。しかも水嶋くんのそばにはいつも檜山由莉奈さんがいる。才色兼備で誰からみても二人はお似合い。でも諦めたくない、私、檜山さんとは恋のライバルなんだ! 檜山さんに絡まれようと、呼び出されようと、壁にドンってされようと、どんなに怖くても…! って思ったんだけど、なんで檜山さん私のことを「好き」って? 少女漫画主人公の木村さんと、ライバルの檜山さん二人の関係性が気になるラブ?コメディ。

 

 ひと昔前の少女漫画のテンプレとして、地味で自己評価も低い主人公がひょんなことからイケメンの男子と接点を持って関係を進展させていくラブコメがありました。また、そのライバルポジションになるのは、完璧でイケメンとも並び立てるほどの美少女というのが定番です。

 ちょっとドロドロしたストーリーだと、その美少女ライバルが地味主人公をいびるシーンもあります。

 この作品でも途中まではそういう話なのかと思ってしまいます。

 が、それは大きな勘違い。美少女ライバル・檜山さんが愛してやまないのは、なんと地味主人公・木村さんだったのです。

 檜山さんは水嶋くんのことなんてアウトオブ眼中、木村さんへのアプローチを繰り返します。

 木村さんもそんな檜山さんに引き気味だったものの、徐々に意識するようになってきて……。

 そして、普通の少女漫画だったら中心に居るはずのイケメン・水嶋くん。物語が進むにつれて面白いほどアウェーになっていきます(笑)。

 ガールズラブとしてよりも、王道とのギャップが笑えるコメディー漫画として、僕はとても気に入っています。

 元がpixivの漫画だったためpixivでも読めますし、大幅描き下ろしの単行本も既刊2冊なので、こちらもとても手に取りやすくなっているかと思います。

 少女漫画やガールズラブが苦手だったら縁がなかったりする人にも、オススメしたい漫画です。

 

 

3.三島芳治『児玉まりあ文学集成』

児玉まりあ文学集成 (1) (トーチコミックス)
 

児玉さんはまるで
詩のように
改行の多い
話し方をするーー

文学部部長にして唯一の部員である、完全無欠の文学少女・児玉まりあと、
有望なる部員候補・笛田くん。特殊で濃密な二人きりの文学部活動。

比喩・記号・語彙……文学の構成要素をテーマに、
孤高の才能が描く静寂と浮遊感、とびきりのポップ。
詩情あふれる台詞と画面、ミステリのように反転する物語。
近いようで遠い文学と漫画が、かつてないほど接近した奇跡の怪作!

 これは後輩に教えてもらった漫画です。多分教えてもらわなければ手に取ることもなかったんじゃないかと思います。

 独特な世界観に「これは何だろう?」と、疑問と好奇心を持ちながらゆっくり読み進めていくと、それでもやっぱりわかるようなわからないような……。その曖昧さが作品に奥行きを与えていて、読んでいてクセになります。何度も読み返したくなるタイプの作品です。

 そして、着眼点がとても面白い! 直前の文でも使った「!」のような記号を新しく作ってみようとしたり、身の回りのものに比喩をつけてみたり。文学好きがやってみたいことの数歩先を行くような試みが、読んでいてほんの少し憧れます……この作品世界の雰囲気の中でしかしっくり来ないので、あくまで「ほんの少し」なのですが。

 あとは、この作品のことを教えてもらった時にも言われていたのですが、第5話は読んでいてゾクっとしました。どこか空白の多い描写の意味、児玉さんの見え方、笛田くんのモノローグ、総てが腑に落ちると共にちょっぴり怖くもあって。ぜひぜひその目で確かめて欲しいです。

 この作品は静かな場所で一人でじっくり読んで欲しいかなと思います。何かの隙間時間に騒がしい場所だと集中しきれないか、逆に集中し過ぎて元の俗世に戻れなくなりそうだからです。あくまで僕個人の印象なんですけれどね。

 ちなみに、僕は2巻の井上さんの話が一番好きでした。

 あにはからんや、この漫画も既刊は2冊。レーベルと出版社がマイナーで本屋さんで探すのが大変なので、通販や電子書籍で買うのが良いかも知れません。

 僕は教えてもらった翌日にKindleで揃えました。

 

 

 いかがだったでしょうか。上記作品以外にも、大人買いしたジョジョ7部だったり、来年1月に映画が公開される銀魂を読み返したりなど色々読んでいたのですが、今回は敢えて新規の作品を紹介させていただきました。

 意図していないものの、3作品とも既刊は2冊なので「ちょっと読んでみようかな」感覚で手を出しやすいと思います。

 故にちょっと読んでみてください!

 面白いから!

 慌ただしい今年に良い憩いの時間を与えてくれた漫画たちに多大な感謝を捧げつつ、来年も面白い漫画と出会えるように願いながら。

 今年のブログの締めとさせていただきます。

 皆様、良いお年を〜〜!

『涼宮ハルヒの直観』感想〜「鶴屋さんの挑戦」に寄せて〜

 

 

内容(裏表紙より)

初詣で市内の寺と神社を全制覇するだとか、ありもしない北高の七不思議だとか、涼宮ハルヒの突然の思いつきは2年に進級しても健在だが、日々麻の苗木を飛び越える忍者の如き成長を見せる俺がただ振り回されるばかりだと思うなよ。
だがそんな俺の小手先なぞまるでお構い無しに、鶴屋さんから突如謎のメールが送られてきた。
ハイソな世界の旅の思い出話から、俺たちは一体何を読み解けばいいんだ?
天下無双の大人気シリーズ第12巻!

 

 

 

 待ちに待ったハルヒの最新刊だ。感想を書かずにはいられなかった。新刊が発売されるというニュースを見てから、俺のテンションは鰻登りの滝登り。ようやく手に取って読み切った勢いそのままにこれを書いている。

 俺の取れる最も速い移動手段である自転車で本屋に買いに行った。

 

 

 直帰して部屋にこもり、文庫本1冊や財布などを入れるスペースよりもさらにゆとりのあるバッグを放り出して、夢中になって読み始めた。

 

 

 読むペースは人よりも早い方だと自負していたが、流石の俺でもすぐに読み切ることはできなかった。段々日が沈むのが遅くなっていくこの時期とは言え、読み始めた時は真昼間の明るさだったのに、読み終えた時にはもう辺りは真っ暗だ。

 

 

 しかし、胸の内はらしくもなく爛々と輝き、充実感とスッキリとした感覚に満ち満ちている。前巻の、続きが気になる終わり方から長い間お預けにされていたものが、ようやく落ち着いたからだ。いやぁ、本当に良かった。

 一応、別の媒体でこの最新刊の一部が読めたとは言え、やはりきちんと完品としての最新刊を読めた時の感動は大きい。

 

 

 さて、そろそろ内容についても触れよう。

 涼宮ハルヒという小説はライトノベルとしては勿論のこと、SF小説としての側面も大きい。

『憂鬱』で朝比奈さんは時間のことをパラパラマンガに喩えていたが、物語がさらに進んでいくと作中では“時間平面”という言葉がよく用いられる。平面が積み重なって層となり、それが時間なのだという考え方だ(多分こういう理解で良いと思う)。

 まさかそれを個人の意思で変えようとする人物が現れようとは、と読んでいて結構驚いた。“彼”の事情を思うと「悪用」という言葉はあまり使いたくないが。

 これまでのシリーズの中でも、スケールとボリュームの大きい物語だった。その一方で、日常の象徴である同級生たちの意外な側面を知れたのも良かった。クリスマス前に付き合い始めてバレンタイン前に振られた谷口の彼女の正体だったり、国木田が北高に進学した理由だったり。メインではないからしょうがなかったとは言え、鶴屋さんの出番はもうちょっと欲しかったかな。

 

 

 と、こんな風にネタバレを避けるとやや抽象的な言い回しの感想になってしまったが、とにかく語りたかった! 良いインプットをすると、アウトプットをしたくなる衝動に駆られるものだから!

 一度に2冊を読むのは流石に骨が折れたものの、読みたい一心で夢中でページをめくっていた。

 

 

 次の日の学校に支障が出るから平日にはあまりできないが、俺は特に気に入った新刊は超スピードで読破した後に、徹夜してでももう一度ゆっくりと読み返す習慣がある。

 

 

 が、流石に2冊をまた読み返す気力・体力は残っていなかったから、代わりにこれを書いているという訳だ。……読むのは大変でも書くのは良いのか、という指摘を受けそうだ。

 うん、どちらも苦痛ではないが、気分次第では書く方が楽なこともある。

 

 

 また読み返したら、新しく気づくことや思うことが出てくるだろうが、ここで一旦感想を〆としておく。

 以上、涼宮ハルヒの驚愕(前)(後)』の感想終わり!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんにちは、モンブランです!

 いかがだったでしょうか、上記の感想文は?

 そうです、9年半ぶりに出た今回の最新刊『涼宮ハルヒの直観』ではなく、実は『涼宮ハルヒの驚愕』について書かれたものだったのです。

 騙されてくれましたか?(笑)

『直観』の中の書き下ろし「鶴屋さんの挑戦」で叙述トリックが使われていたので、僕もまた叙述トリックを使ったブログに挑戦してみました。

 ミステリを読むのは好きで、叙述トリックを扱った作品も数多く読んできましたが、かと言って簡単に書けるものではありませんね。

 上記の感想は、『涼宮ハルヒの驚愕』が発売された当時に書いた感想文に手を加えて書かれたものです。ですので、あからさま過ぎる部分は端折りながらも、『直観』の感想としては違和感があるように仕上げたつもりです。

 ヒントがなければ不親切ですからね。一応、ヒントのある部分ごとにスペースを空けてわかりやすくしておきましたが、出題者の義務としてざっと解説をしておきましょうか。

 

①まず、今の僕で「最も速い移動手段が自転車」なのはあり得ませんね。社会人かつとっくに免許を取っているので、本気で急ぐならば自動車を使うべきです。当時学生だったならばさにあらず、ですが。

②バッグのスペースについて詳細に書いてありますが、文庫本が1冊だけとは限らないことが示唆されています。事実、『驚愕』は前編・後編の2冊でしたから。『直観』は文庫本約400ページなので、少々厚めとは言え1冊分のスペースで良いはずです。

③こちらも同様に、1冊ではなく2冊読んでいたことが示唆されています。2冊も読んだら流石に日が暮れますよね、合計で800ページ弱くらいありましたから。

④この辺りから内容に触れています。明確に「続きが気になる終わり方」というのは、このシリーズの読者ならばわかると思いますが『驚愕』の前の『分裂』だけなんです。別の媒体で発表されていたというのも偽りではなくて、『驚愕』は『ザ・スニーカー』という雑誌(現在休刊中)で最初の章が先行公開されました。ちなみに、『直観』の「あてずっぽナンバーズ」はいとうのいぢさんの画集で、「七不思議オーバータイム」は『ザ・スニーカーREGEND』で既に発表されていた短編です。

④ここでは内容にガッツリ触れていますね。シリーズ読者ならここで完全に「いや、それ『驚愕』じゃねーか!」とツッコミをしていただけると思います。そうでない方も、内容の方で鶴屋さんの名前が出てきているにも関わらず「メインではない」としているのは不自然でしょう。

⑤はい、ここでも2冊って言っちゃってる!

⑥ここで書いている習慣は本当です。そして、『驚愕』発売当時は高校生でした。懐かしいね。

⑦また2冊って言ってる! 隠す気本当にあるのか!

 

 といった具合です。読んでいて違和感を抱いた方は正しいです。こちらが意図的に仕組んだことですから。

 でも、いつかもっとスマートに自著にも叙述トリックを用いてみたいですね。

 谷川流先生はSFだけでなくミステリにもかなり造詣が深く、そうでなければ作中の古泉たちのミステリ談義は成り立たなかったでしょう。現実の作品からの引用があった時にはたまげましたが。僕的にはかなり有意義で面白かったのですが、ミステリに詳しくない読者はやや置いてけぼりだったような気がします。

 でも、作中で挙げられたタイトルも面白いから是非読んで欲しい。名作の数々だから。

 

 

 そんな感じで、ネタバレをアグレッシブに躱す形で『涼宮ハルヒの直観』の感想をお送りしました。

 ……本当は今回は別の内容について書こうと思ってたんですけどね、そちらは更に次に回そうかなーと。

 ともあれ、今作で改めて“あの伏線”が強調されて、キョンも恐らく谷川先生も一番好きな夏の到来を予感させる内容なので、続刊に期待が持てますね。

 谷川流先生、続きをお待ちしてます!

 

 ではでは、今回はこの辺で!

涼宮ハルヒの帰還

 こんにちは、モンブランです。

 このブログの記事数も今回で50回に到達しましたー! イェー! やったねー!

 この節目に何について語ろうかと悩んだのですが、割とすぐにある結論に至りました。

 

 ……ハルヒだ、と。

 

 僕も区分的には文句なくオタクに属しているのですが、その道を歩み出したきっかけは間違いなく、涼宮ハルヒにハマったことだと思います。

 その上。その上ですよ!

 

涼宮ハルヒの直観 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの直観 (角川スニーカー文庫)

  • 作者:谷川 流
  • 発売日: 2020/11/25
  • メディア: 文庫
 

 

 ハルヒの新刊が9年半ぶりに発売されるとなっては黙っちゃいられませんね!

 ということで、今回は涼宮ハルヒの魅力を僭越ながら改めて語らせてもらいつつ、いかに僕がその沼に落ちていったかをお話ししましょう。

 

 

 

1.原作小説を読もう!

 

 あらすじやアニメについては、もうあらゆるところで語り尽くされ、今さら僕が口を挟めるところはなさそうなので、原作小説について改めてお話ししたいと思います。

 原作は第8回スニーカー大賞の大賞を受賞した『涼宮ハルヒの憂鬱角川スニーカー文庫)』から始まり、現在11冊発売されています。最近では角川文庫でも発売されていて、各巻には筒井康隆さんを始めとした著名人が解説を入れています。

 僕が涼宮ハルヒを知ったきっかけはアニメだったのですが、もしも原作小説の方が面白くなければ、我ながらここまでハマることはなかったでしょう。

 それだけ原作小説が面白いのです。

 アニメでのナレーションにも反映されていましたが、小説では主人公のキョンによって全編語られています。

 このキョンの語りが面白くて、SOS団で一番学業成績に難があるにも関わらず、古今東西の故事や歴史、宗教から映画、文学、様々な人物の言動や科学分野の専門用語などを度々引用・暗喩・婉曲表現したりなど、本当は頭良いんじゃないのかと思ってしまうくらいです。

 いくつか例を挙げさせてください。

 

 

“運命なんてものを俺は琵琶湖で生きたプレシオサウルスが発見される可能性よりも信じない。だが、もし運命が人間の知らないところ人生に影響を行使しているのだとしたら、俺の運命の輪はこのあたりで回り出したんだろうと思う。きっと、どこか遥か高みにいる誰かが俺の運命係数を書き換えやがったに違いない。”(『涼宮ハルヒの憂鬱』より)

 

 キョンの語り口が凝縮されている一連の文章です。知性があるんだか、捻くれているんだか、それでも不思議と頭に入りやすい魅力があります。

 

 

“この長門の精神状態はまるで一貫していない。それともこの時期の 平均的な高校女子一年のメンタリティはクジラ座α星の変光周期並みに不規則なのか?”(『涼宮ハルヒの消失』より)

 

 天文学には疎いもので、というか普通の高校生が想起するような比喩ではありません。天文学……高校の教科で言えば地学にあたるでしょうか。一応センター試験の理科の中にもありましたが、地学を選択する人なんてかなりのマイノリティーだと思います。

 ……あれ、もうセンター試験ってないのか?

 

 

“さばさばと言ってのける鶴屋さんがひたすら頼もしい。いつまでも朝比奈さんとペアを組んでて欲しいね。ハートとダイヤのクイーンでツーペアだ。鶴屋さんがそばにいる限り、朝比奈さんにちょっかいを出そうなどという不埒者は現れないだろうからな。ハルヒ? ああ。あいつはジョーカーが相応しい。ファイブカードには不可欠のな。”(『涼宮ハルヒの分裂』より)

 

 マイナーな場面と文章ですが、僕がシリーズの中でも一二を争うほど気に入っている文です。ジョーカーというハズレ者にも関わらず、ファイブカード、つまりSOS団の5人を結びつけるのに不可欠な存在だということが語られています。『分裂』ではハルヒキョンたちが進級していて、時間の経過とそれに伴う結束の強さが窺えて、故に僕の中でもかなりお気に入りの比喩なのです。

 

 

 いかがだったでしょうか。11冊発売されている小説の、本当にごく一部に過ぎないのですが、少しでも原作小説の良さが伝われば嬉しいです。アニメでも小説の時の雰囲気を忠実に描くため、キョンのモノローグが多用されていました。特に『涼宮ハルヒの消失』では約160分の映画でキョンの語りが多く盛り込まれていて、キョンを演じていた杉田智和さんすごいなーと感心しました。

 ライトノベルの中でも古典に片足を突っ込みつつある涼宮ハルヒシリーズですが、令和になった今でもより多くの人たちに読んでいただきたい名作です。

 

 

 

2.涼宮ハルヒにハマった僕の話

 

 ぶっちゃけた話、もうエンドレスエイトの話は聞き飽きたでしょう?

 作者の谷川流さんが冨樫病に罹っただの何だの、もうあらゆるところで書き散らされてきたでしょう?

 何番煎じかもわからない話をしても無駄だと思うので、ただの涼宮ハルヒにハマった僕の話をします。別に良いじゃない、日記だもの。

 僕が涼宮ハルヒシリーズにどハマりしたのは、中学生の頃です。

 昔から読書少年だった僕は小学校高学年ごろは江戸川乱歩の少年探偵シリーズや、シャーロック・ホームズ、ルパンシリーズなどを読み耽っていました。ミステリのジャンルが好きだったんです。奇怪な謎を知恵でもって解き明かす話が、たまらなく大好きだったんです。

 中学生になった頃には東野圭吾さんなどの日本のミステリ小説を読んでいることが多かったです。が、少々飽きてきていました。

 本を読むことそれ自体は大好きなままだけれど、そろそろ新しい息吹を取り込みたい。

 そう思った矢先、友達の家で涼宮ハルヒのアニメの一部を視聴したんです。何のエピソードだったかは思い出せなかったのですが、新鮮な面白さを感じたことは覚えています。

 さらに調べてみたところ、涼宮ハルヒ角川スニーカー文庫というライトノベルのレーベルから出ている小説シリーズだということがわかりました。

 確か、中学の期末試験の前日だったと思います。塾の途中に本屋に立ち寄って、初めてライトノベルのコーナーを覗きました。試しに『憂鬱』だけでも買ってみようかと。

 すると、本当に偶然だったのですが、その時発売されていた涼宮ハルヒの小説は、『憂鬱』から『分裂』までの表紙が一枚絵で繋がったパノラマカバー版だったのです。

 1冊だけ買ってもなぁと思って、つい発売されていた『憂鬱』から『分裂』までの9冊全部買ってしまいました。

 試験の前日に何をやっているんだと、今でも思います。

 その上、塾から帰ってきた後に『憂鬱』を読み始めて、その日のうちに1冊読破してしまいました。

 これが後の人生にも大きな影響を及ぼす出会いだったのです。

 印象的なキャラクターたち。日常の延長線上にあるSFチックなストーリー。小説ってここまで面白くて良いのかと、言い表せないほど強烈な感動に襲われました。

 涼宮ハルヒだけではないにしても、ここまで面白くて楽しい物語に出会っていなければ、小説を書いている今の僕は居なかったと思います。多分もっとつまらない奴になっていたんじゃないかと、そう思えるくらいに大きな影響を受けました。

 その後は坂を転がるどころか奈落の底へ向かってジェット噴射したくらいに、涼宮ハルヒにハマっていきました。小説を何度も読み耽り、アニメのDVDを全て揃え、気づいた時にはもうオタクになっていたのです。

 そして、小説を読んでいて文章の端々から、作者の谷川流さんがかなりの読書家だということを感じました。

 作中に登場する読書好き宇宙人・長門有希が読んでいる本という体で、昔、「長門有希の100冊」という企画がありました。

 

↓リストのリンク

http://nagatoyuki.info/?%C4%B9%CC%E7%CD%AD%B4%F5%A4%CE100%BA%FD

 

 谷川流さんも長門と同じくSF・ミステリ好きということもあって、恐らく谷川さんの既読本の中から選ばれたものだと思われます。

 僕もその100冊(厳密には100冊はないけど)に挑戦しましたが、入手困難なものが多かったり、量がそもそも多かったりで半分くらい読んだところで挫折してしまいました。

 しかし、この時の体験から幅広い読書の面白さを知り、以降はジャンルを問わず様々な本を読むようになりました。今では立派な濫読家です。

 

 ……こうして振り返ってみると、涼宮ハルヒが僕に及ぼした影響はすごいですね。人生歪んだどころじゃないです。完全に出会った・出会わなかったで大きな分岐点になっています。

 しかし、僕は胸を張って言えます。

 涼宮ハルヒに出会うことが出来て良かった、と。

 

 

 

 さてさて、いかがだったでしょうか。

 50回目のブログということで、僕の人生への影響度から『銀魂』とどちらが良いか迷ったのですが、新刊が出ると聞いてバンザイと共に、涼宮ハルヒについて語らせていただきました。

 もうハルヒキョンたちの年齢を追い越してしまって久しいですが、未だに小説をたまに読み返しています。物語の面白さもあり、自分の青春時代を思い出せることもあり、大人になっても僕はずっと涼宮ハルヒが大好きです。

 前作の『驚愕』から9年半の月日が流れましたが、2020年11月25日に、僕たちの涼宮ハルヒが帰ってきます!

 我らが団長の帰還を感謝と期待をもってお迎えしましょう!

 

 ではでは、今回はこの辺で!

晴れの日も雨の日も本を読みたい(8)

 こんにちは、モンブランです。

 近頃は忙しくて趣味に回す時間があまりないのですが、それでも本を読むことだけはやめられない!

 ということで、最近読んだ面白かった本をいつものようにご紹介したいと思います……の前に。

 本を読むことそのものに対して考える機会が少し前にあって、その話をしようかなーと思います。

 

 

 

 本を読む醍醐味は無数にあって、人それぞれに楽しみ方があると思います。

 僕が強いて一つに絞って挙げるとするならば、本の内容を追体験できることでしょうか。

 限りある人生の時間の中で体験できることはだいぶ限られています。それに、自分の今の日常を胸を張って「面白い」と言い切れる人はそう多くないはずです。かく言う僕もその一人。ささやかな日常を謳歌しつつ、何か面白いことないかなーと指を加えてボーッとしてばかり。

 そんな問題を解決してくれる友が本なのです。文章を追うことで人物の思考や風景を頭に思い浮かべることで、およそ自分が体験できないような非日常を味わうことができます。

 それはアマゾンの奥地へ恐竜を発見しに行くことだったり。

 あるいは、黒髪ロングの厨二病美少女とのラブコメだったり。

 またあるいは、バラガキと呼ばれた実際の歴史上の人物の出来事だったり。

 自分が実際に体験した日常も、本で読んだ非日常も、どちらも頭に思い浮かべれば同じこと。フィクションとノンフィクションは回想にしてしまえば、そこまで大きな差はないのです。

 そう考えてみると、本を読むだけで自力では得られないような経験値を得られると思うと、とても素晴らしいことのように思えてきませんか?

 ただ、実際にはみんながみんなそうはいきません。本を読むことに苦手意識を持ったり、面倒に思ったりする人も少なくありません。それは何故か。

 本を読むのは面倒くさいからです。何が面倒くさいって、文章を読んで自ら頭に思い浮かべるという自ら積極的に行動しなければならないところです。絵や漫画ならば一目で理解できるものを、文章では読んで理解するという複数の工程を踏まなければならない。それが苦手意識を与えたり、面倒に思わせたりするのです。

 しかし、本を読むことは楽しむこと以外にも多くの利点があります。

 まずは読解力。文章を追うことに慣れると、文と文の繋がりーー文脈を理解できるようになります。逆に文脈の理解が足りないと、会話が通じなかったり噛み合わなかったりして、日常生活に支障をきたすでしょう。家の中でも外でも、それでは困ってしまいますよね。

 次には語彙力。言葉は実際に使われているところから身につけるのが一番手っ取り早いです。そんな実用例を手軽に参照することができるのが本なのです。語彙も多いに越したことはないですよね。何を表すにも「ヤバい」だけでは残念だし、RPG風に言うなら、覚える呪文は多いキャラの方が重宝されるものです。

 ……何だか書いていて説教臭くなってしまいましたね。僕が言いたいのは、本は色んなことを教えてくれる物知りな友達くらいに思って欲しい、ということです。

 食わず嫌いならぬ読まず嫌いは勿体ない!

 読書最高!

 

 

 ということで、前説がめちゃくちゃ長くなってしまいましたが、今度こそ本題の読んだ本の話をしましょう。

 

1.青山美智子『鎌倉うずまき案内所』宝島社

鎌倉うずまき案内所

鎌倉うずまき案内所

 

 僕の最近のイチ押し作家である、青山美智子さんの作品です。

 あらすじは以下の通り。

 会社を辞めたい20代男子。ユーチューバーを目指す息子を改心させたい母親。結婚に悩む女性司書。クラスで孤立したくない中学生。いつしか40歳を過ぎてしまった売れない劇団の脚本家。ひっそりと暮らす古書店の店主。悩める彼らの前に突然現れる「鎌倉うずまき案内所」。螺旋階段を下りた先には、双子のおじいさんとなぜかアンモナイトが待っていて…。平成時代を6年ごとにさかのぼりながら、6人の“はぐれた”人びとが「気づくこと」でやさしく強くなっていく。うずまきが巻き起こす、ほんの少しの奇跡の物語。

 読み進めるにつれて時代を逆行していくというのが面白く、また、エピソード間の人物たちの繋がりがあるのが魅力です。このエピソードに登場した夫婦があのカップルの後の姿だったり、魅力的な同僚が別の子の中学の同級生だったり。そういう発見が多くて、一度読んだ後もまた読み返したくなるほど物語に病みつきになるのです。

 その上で、青山美智子さんの作品の持ち味である、読んでいて登場人物と一緒になって前向きになれる要素がふんだんに詰まっていて、この作品も読後感がとても良い、素晴らしい作品です。

 これまでブログで書いてきた中でもトップクラスにオススメな小説です。機会があれば、ぜひぜひお手に取って欲しいです。

 

 

2.武田綾乃『愛されなくても別に』講談社

愛されなくても別に

愛されなくても別に

 

 アニメ化もした『響け!ユーフォニアム』でも有名な、武田綾乃さんの最新作です。

 あらすじは以下の通り。

 遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月八万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!

 愛情は、すべてを帳消しにできる魔法なんかじゃない――。

 ……武田さんの別作品(『石黒くんに春は来ない』など)を読んでいても感じていたのですが、この人、相当な闇を抱えていますね。もちろん褒め言葉ですよ。

 誰もが心の奥底で封じ込めているようなネガティブな感情が詳らかにされていって、妙な快感すら覚えるほどです。そういう言葉にしづらい感情をわかりやすい文章に変換できるのが、この著者の強みだと思います。

 陽彩に限らず、他にもそれぞれの形の“毒親”に縛られた人物たちが登場して、色々と考えさせられます。

 が、鬱屈した雰囲気の中でも、陽彩の最後の決断が小気味良く、読後感を気持ち良くしてくれました。

 ユーフォのような雰囲気を期待して読むと痛い目を見ますが、それでも筆力のある著者の別作品に興味があったり、怖いもの見たさで読んでみたかったりする人にはオススメです。

 

 

 さてさて、いかがだったでしょうか。

 前説が長過ぎたせいで今回は2作品しか紹介できませんでしたが、たまにはこういう試みも良いんじゃないかと思います。僕は楽しかったです。

 

 このブログの記事数も次で50に到達します。ビックリですね。よくここまで続いたものだと、呆れ半分感慨半分みたいな感じです。

 次に何を書くかは全く考えておりません。ノープランです。またその時になったら、書きたいものを自由に書こうと思います。

 

 ではでは、今回はこの辺で!