こんにちは、モンブランです。
梅雨が終わっているんだか終わっていないんだかよくわかりませんが、湿気と暑さが不本意ながら身に沁みている今日この頃、皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
地球温暖化が騒がれ始めて、もう何年経ったのでしょう。年を追うごとに暑さが増しているのを見ると、お天道様から「そら見たことか」と言われているようですね。そらだけに。
そんな戯言はさて置き、『兄妹シリーズ』が半月くらい経ちました。今は今で色々やっているのですが、執筆関係のあれやこれやを日々の中で一切やらないことへの違和感が、未だに拭えません。
連載をしていた頃は書くことが面倒くさくなる時もあったくらいなのに、いざ書かなくて良くなるとまた書きたくなる感覚。矛盾。何なんでしょうね、これ。
そんなモヤモヤもあり、作中で書き切れなかった裏事情もありありなので、あとがきみたいなものを書いてみたいと思います。
ドンッ!
1stシーズン
そもそもシーズンという括りすらなかった頃。初期中の初期ですね。アナ雪を時事ネタに使っていた時期です。
兄妹の話を書こうとしたきっかけは、当時放映されていた某さすおにアニメでした。今となっては、“俺TUEEE!”系の走りになったラノベ界における史的価値のある作品だと思いますが、当時はあまり好きじゃなかったんですよね。妹役の声優さんは大好きだったんですけど、あの妄信的なブラコン感が気持ち悪かったと言いますか……、そんな感じでした。
ならば、自分の理想は何だろうか。それを実際に形にしたのが、「優しい雨」という短編でした。
高校の時に書いていたキャラの子どもという裏設定もあってか、自分でもかなり気に入ってしまったので、幼馴染キャラも追加して、さらにはもっと話を引っ掻き回してくれそうな、“あのキャラ”までも書いてしまったのでした。
雲居香純ちゃんは、当時〈物語〉シリーズの忍野扇ちゃんが好きだったので、自分でも押しが強い慇懃無礼後輩キャラを書きたいという欲望のもと生まれました。
ただ、全く同じにしても面白くないので、初めて設定をしっかり考えて作りました。結果、後になって重過ぎる可哀想過ぎると思い、香純ちゃんを幸せにするという目的が、途中から書くモチベーションの一つになって行きました。
僕の好きなSF(少し不思議)的な事件も交えつつ、物語を締めようと思っていました。
思ってはいました。
2ndシーズン
気分転換に水着回を書きつつ、まだ書ける余地があるんじゃあないかと思い始めました。
1stシーズンでは兄と香純ちゃんを掘り下げましたが、優雨の方がまだだったな、と。
この頃から『小説家になろう』での電子連載を始めたと記憶しています。優雨(年下キャラ)の逆を行く日和おねーさん(年上キャラ)にご登場いただいたことで、めちゃくちゃスムーズに書けました。
書き終えたところで、「次は何を書こう」と思い始めたあたりから、完全にシリーズ、長期連載化を意識しだしました。
一晩使って〜5th、finalシーズン、エピローグまでのプロットを作り上げ、書く当時のフィーリングも大事にしつつ、このプロットをなぞる執筆を完結まで続けていくこととなるのです。
インタールード
今後の展開の下準備として設けたインタールードです。この辺りで付き合いで読んでくれていた大学の友人からも、卒業を機に読まれなくなります。うん、それは良いや。とにかく、本編をかなり意識した番外編です。
一番最初の「ゆうフレンズ」は、主人公兄妹たちレギュラーメンバーを外側から見られるキャラが欲しくて、優雨の同級生の海野雪水ちゃんに登板してもらいました。
やれやれ系ダウナーラノベ好き少女。以前から挑戦したかったキャラをお試しで書いたところ、かなり気に入ってしまい、使い切りの予定が準レギュラーにまで昇格した大出世キャラです。
あとは、香純ちゃんと家達さんの再会、兄妹誕生秘話、実験的挿話的な。
寄り道なようで、本筋から逸れていなくて、でもやっぱり余計なこともたくさんしていました。
とってもたのしかったです。(作文)
3rdシーズン
2ndシーズンの最後で仄めかしていましたが、主人公は香純ちゃんの義弟の雲居夕霧くんです。ちなみに、夕霧くんの両親にして、香純ちゃんの伯父叔母の雁夜さん、葵さんも皆んな『源氏物語』からいただいています。源氏における夕霧は、その血の運命(さだめ)とも言うべきか、幼馴染同士の純愛を自分で台無しにしたガッカリボーイなのであんまり好きじゃないんですが、雲居夕霧くんは良い子です。
小学3年生ながら姉の影響もあってとても賢く、行動力と直向きさを持ち合わせていてくれたお陰で、きちんと主人公を務め上げてくれました。
この章の目的は、香純ちゃんの家族の問題の解決と、ラスボスのラスボスっぽさのチラ見せ。1stシーズンでは前向きにはなっても根本的な解決はし切れなかったので、将来的に香純ちゃんに大活躍してもらうべく、後顧の憂いを断つ必要があったのです。
夕霧くん、本当にありがとうございました。
夕霧くんは夕霧のようにはならないのでご安心ください。
4thシーズン
沖縄での修学旅行です。
……修学旅行と言えば奈良京都が王道なんですが、僕自身が修学旅行で一度も行ったことがないんです。経験した修学旅行の方が書きやすかろう思い、自分の中で最も楽しかった、中学の修学旅行で行った沖縄を舞台にしました。
本編のエピソードも、キジムナーもどきのククル関係以外はほぼ実話です。書いていて懐かしい気分になりました。
4thシーズンでは、高校生らしいイベントをさせつつ、ちょっとずつ人間関係を前に進め、ついでに最終決戦に使える伏線を仕込む魂胆がありました。計画通りでした。がはは。
5thシーズン
最後の日常編です。finalシーズンではシリアス続きなので、完全に肩の力を抜いて書ける最後の章でした。と言いつつ、書くべきことが盛りだくさんでした。プロットから箇条書きを引用したものが以下の通りです。
・晴輝をいい加減吹っ切れさせる←SAO的なゲームでドラクエ的な冒険させよう、ゲームは人の本性が出がち
・咲良ちゃんと香純ちゃん、それぞれクリスマス前後に告白。香純ちゃん勝利。
・負けヒロインのフォロー。世界のサクラ・ハヤマへの道。
・年末。井坂文弥登場。finalへ。
目的や方針を書き出すなら、このくらい簡素な方が良いんですよね。派生はあっても軸はブレない。
……。書いていて思い出したのですが、この頃、めちゃくちゃ感想を書いてくれる読者が居ました。滅多にないことなので、丁寧に返信したところ、1話ごとに感想まで書いてくれました。ありがたいことだったのですが、一方でTwitterでの絡まれ方が面倒臭かったんですよ。「インターネットストーカー」という言葉がしっかり来ました。老若男女問わずしつこい人は嫌いなので、ブロックしたところ、finalシーズン大詰めの直前で感想が書かれなくなりました。何だったんでしょうね、アレ。
finalシーズン
気を取り直して、finalシーズンを語りましょう。シーズンと言いつつ、Part.1〜3まで分かれています。
僕自身の話になってしまうのですが、今まで読んだ本の中で衝撃を受けた作品のひとつに『涼宮ハルヒの消失』がありました。自分ひとりを残して日常が書き換わってしまう怖さ、今まで当たり前にあったもののありがたさの再確認、日常を取り戻す覚悟と決断。
finalシーズンでの最終決戦は、確実に『涼宮ハルヒの消失』の影響を受けています。自覚アリです。ついでに、スティーブン・キングの『ダークタワー』の影響も否めません。勿論、真似だけしても僕が書く価値はないので、ある大仕掛けも組み込みました。……途中まで書いてみてあまりにアンフェアだと思ったので、急遽香純ちゃんに『アクロイド殺し』のタイトルと共にヒントを出してもらいましたが。
最終章でキーになるのは、3rdシーズンで脇役で登場した、水川家メイドの晶さんです。元々ここでの出番を想定した上で、3rdの時点で初登場してもらっていました。「年齢不詳」の文言が若々しさの表現に留まらず、本当の意味での年齢不詳、覚えていられないほど長く生きているとは誰も思うまい。
しかし、初登場からかなり期間が開いてしまっており、感情移入してもらうのは難しい。そこで、新春番外編と題した挿話により、晶さんの過去と現在、ついでにシリーズ終盤を引っ掻き回してくれた蓮生司炎伽の参加を描きました。蓮生司炎伽については後述。晶さんは長生きの為に人格をシンプルに作り上げていたので、基本忠義の人で、茶目っ気は炎伽から影響を受けているのかもしれません。
finalシーズンでは日常に回帰してから、香純ちゃんから“絶対記憶能力”を取り上げつつ緩やかに終わりを迎えました。
僕が高校生の時に書いていた、“才能(ギフテッド)”という異能みたいな概念を、最終盤に再び採用しました。『兄妹シリーズ』は言葉の応酬をメインにしたかったので使うのを避けていたのですが、曖昧なものを失くすよりも展開としてわかりやすいかなーと。いや、この物言いからしてわかりづらいんですけど。
兎にも角にも、“絶対に忘れない能力”というのはやはり負担が大きいので、大人になると共に解放してあげたいという親心みたいな。彼女自身能力を疎ましく思う一方で、思い出に支えられていた面もあったよねという意地悪もしつつ。
もう一点、兄妹に新しく弟妹が生まれることも、プロット通りです。未来への展望も残しつつ、兄妹たちの物語を終えたかったんです。締めるところは締めて、新しい物語を始められる余地を残しました。
Nextシーズン
新しい物語というか新しいシーズンなんですけどね。
主人公はfinalシーズン終了直後に生まれた、寺井美空ちゃんです。
物語は彼女が女子高生になった時点なので、だいぶ未来の話になります。世代交代もしているので、兄妹たちはみんな大人になりました。
実はNextシーズンは着手する時点で、具体的なプロットが全くない状態でした。事前に用意していたのは美空の何となくの人物像のみ。
おまけに既存キャラは基本ゲスト出演のみという縛りを設けていたので、実質新連載を始めるようなものでした。
美空は、歌唱力・絶対音感・人の声から考えていることを正確に読み取れる、作中一の美少女、というスペックなので、芸能関係に進むしかない。
しかし、地方の町の少女がテンポ良く芸能界に進むにはどうしたら良いか。考えて真っ先に浮かんだのは、スカウト、延いてはアイドルマスターシンデレラガールズのようなステップアップストーリーでした。
そこで、プロデューサーたる人物を用意しました。展開の早さと都合の良さには胡散臭さがある。しかし、敵ではなく一貫して美空の味方になる人物なので偽悪的なだけ。彼には彼なりの業を背負ってもらう。という連想ゲームの末に出来上がったのが、黒子晋作です。
あとは、事務員さんも必要ということで登場させたのは、百地利奈さんです。……完全に言葉遊びですね。デレマスの千川ちひろさんが元になっています。マスタートレーナーならぬ松田麗さんもそう。キャラメイクがデレマスにおんぶに抱っこに肩車です。
ただ、美空のずば抜けた“才能”は“よくないもの”を惹きつけそうだとも思い、“才能”を狙う魔物のような存在と、彼女を守る異能の持ち主として蓮生司炎伽に転生してもらいました。伝奇要素です。
経緯は彼女自身が作中で全て語ってくれているので割愛するとして、彼女の転生は、強力過ぎる“才能”ゆえに死んでも死に切れなかった彼女への救済措置でもありました。豪快かつ繊細で寂しがり屋ですからね。
炎伽を絡めることで、伝奇ストーリーの内容もより具体的に固まり、美空の物語の収束に向かえました。
何者にもなれなかった美空が、“才能”を花開かせ、誰かに何かを与えることができるようになること。
ストーリーを組み立てる途中でNextシーズンの目標も決まり、大舞台に立つと共に、身の破滅も厭わず黒子に徹しようとした人物を救うことが出来ました。
立派な主人公になれたところで、Nextシーズン、新世代の物語の幕を閉じたのでした。
オフシーズン
パーフェクトに書き手側の都合だったのですが、文字数と話数をキリ良く終えたいが為に、4話だけ継続しました。
書き切れなかった“その後”の話もありましたし、大人になった兄妹たちレギュラーメンバーも書きたかったんですよね。特に咲良ちゃんの扱いが雑だったし。
晴輝と香純ちゃんの子どもの双子(陽羽と羽月)も、短いシーンではありますが、書くことができて良かったです。
陽羽は、優雨をベースに香純ちゃんの賢さとシスコン要素を増しました。
一方、羽月は、最近アツい『ぼっち・ざ・ろっく』の後藤ひとりの超コミュ障ぶりをベースに、超シスコン要素を増して出来上がりました。書くことはなかったのですが、怒らせたらヤバいのは羽月の方です。やっぱり香純ちゃんの子なので。
そしてやっぱり、真の最終回は緊張感なくグダグダな感じで終わりました。キャリアを積んで、ちゃんとしたもの以外書けなくなっていたので、苦痛を強いられる作業でした。嘘です。めっちゃ楽しかったです。最終回っぽいことは、直前の香純ちゃんのヨーロッパ旅行でやってくれたので、最終回では初志の如き自由さで書くことができました。
物語としては終わってしまうけれど、彼らの日常は続いていく。ひょっとしたら、また彼らの日常を書く機会があるかもしれない。そんな可能性を残しながら、『兄妹シリーズ』は幕を閉じました。
……具体的には、双子を中心に新しく書けそうな気がしているのですが、今のところは全くの未定。束の間の(?)休息です。
最後に
『兄妹シリーズ』に登場するキャラたちは全員濃い。風景同然の人物を書くことに不毛さを感じて、『兄妹シリーズ』は全員が主人公になれるくらいの個性を持っていました。現に語り手は頻繁に交代しており、3rdシーズンに至っては丸々小学3年生に委ねる始末。適当なキャラをピックアップしてスピンオフを書こうと思えば、いくらでも書けたでしょう。
しかし、彼らも僕もちょっぴりくたびれました。いくらかの掲載の遅れはあれど、約9年休みなしに書き続けたので、キレが落ちてマンネリ化させてしまうのは誰の為にもなりません。終われる時にスパッと終わろう。
終わりと始まりを繰り返すのが世の常なので、またきっと新たな始まりが訪れるかもしれません。マジな話、いくつか短編を形にしてから、今度は入念な準備をしてから連載を始めたいです。予定は未定でも望みくらいはあります。気長にお待ちください。需要があるならば。なくても。
その時が来るまでは。
さようなら、全ての『兄妹シリーズ』!
ではでは、今回はこの辺で!