モンブランは静かに暮らしたい。

静かに暮らしたいのに、好きなことの話をすると静かでなくなってしまうブログです。

戯言じゃなくマジな感想〜『キドナプキディング 青色サヴァンと戯言遣いの娘』を読んで〜

 こんにちは、モンブランです。

 そんな文言を77回、今回で78回も繰り返してきたけれど、千の秋は過言であるにしても飽きもせず繰り返し続けてこられたのは、やはりというか単純な話、“名乗り”だからだろう。

 玖渚盾のパパの戯言シリーズその1。

 まず名乗れ。誰が相手でも。

 そして名乗らせろ。誰が相手でも。

 20年も本名を名乗らなかった人間の、戯言遣いのありがたい戯言だ。説得力は有り難くとも、真意は突いている。

 かの有名な紫式部にしても、当時は時の権力者の藤原道長の目にも止まり宮中に取り立てられたほどだけれど、『源氏物語』の作者として後世の我々にも知られることになったのは彼女自身の日記に書かれていたからに他ならない。

 日記に『源氏物語』を書いたことを綴らなければ、『源氏物語』は作者不詳のままだったのだ。

 今にちほど物語の立ち位置が低く、作者の名を記すことがなかったとしても、作者不詳で済ませてしまうにはあまりに惜しい。

 やはり名乗らなければなるまい。

 ソースは明確にしなければなるまい。果たし合いで名乗りを上げた過去から、インターネットに書かれた記事に至るまで。尤も古式ゆかしく執り行われた武士道は西洋の実力主義に淘汰され、情報の海の湧きどころは大概正体不明であるのだけれど。

 モンブランというHNからして嘘である。

 矮小な己を守る為の、偽りの名乗りである。

 息を吐くように嘘を吐いていることを承知で、恥の上塗りならぬ嘘の上塗りをするが如く、書いて見せよう。

 青色サヴァン戯言遣いの物語のその先が描かれた『キドナプキディング 青色サヴァン戯言遣いの娘』の感想を。

 これ、マジで言ってるんだけど。

 

 

首を洗って待ってたかい? <戯言シリーズ>最新作
玖渚盾が挑むのは、古城×双子×首なし死体

私立澄百合学園に通う玖渚盾(くなぎさじゅん)、十五歳。
“パパの戯言”と“ママの法則”を携えた「平凡な女子高生」が、
人類最強の請負人哀川潤に誘拐されて、
玖渚機関の牙城“玖渚城”に送り届けられてしまう!
彼女を待ち受けていたのは、青髪青眼の少女たちとの邂逅と悲惨な殺人事件。
はたして盾は謎を解き、無事に帰還することができるのか?
新青春エンタの傑作<戯言シリーズ>、大団円の先の最新作、ここに結実!!

 

 溢れる情報に簡単に手を伸ばせる社会において、完全なるネタバレ回避は不可能だろう。故にここは割り切って、あらすじをなぞる形で内容にもある程度触れつつ書き連ねていく。

 

1.玖渚友と戯言遣いの娘

 

 2人の子どもの存在は、戯言シリーズの番外編でもある最強シリーズの1冊目『人類最強の初恋』でも書かれており、その名前に〈人類最強〉の哀川潤の「じゅん」という読みを貰うことも触れられていた。

 そして、今作の主人公たる彼らの娘は玖渚盾(くなぎさじゅん)。彼女はパパの戯言に従って、きちんと名乗っている。

「私の名前は玖渚盾。誇らしき盾」と。

「誇らしき盾」と「矛らしき盾」、つまり矛盾と掛けられているのだろうが、彼女に矛の要素も盾の要素も見られなかった。

 自称通りの平凡な女子高生だった。

 己の両親がやばい奴らだったと認識しており、何なら反抗期の表れとして、戦闘集団を養成していた時代とは打って変わって普通の高校になった私立澄百合学園で寮生活を送るくらいには、ごく一般的な感性を持っている。

 パパの戯言はまこと戯言に過ぎないけれど、ママの法則には大きな意味があった。

 100の戯言よりも大きな1の法則。

「機械に触るな」

 お陰で、技術の発展がさらに進み文明の利器が跋扈する世の中で、盾は機械に触れない生活を生まれた時からずっと強いられていた。

 スマホは勿論のこと、家電から外の乗り物まで全てダメ。

 両親の夫婦喧嘩の末に若干は緩くなった法則でも、やはり機械には触れない。

 読み始めた当初は、過去に世界を股にかけて暗躍したハッカーだった母の戒めなのかと思っていたけれど、そんな些末な事情よりも遥かに大きな愛情があったのだ。

 母から娘への愛情が。

 “あの”玖渚友に人間らしい情があることに、若干の寂しさを覚えながらも、ハッピーエンドの延長線上に在ることを改めて嬉しく思ったのは言うまでもない。

 書きはするけど。

 マジで「平凡な女子高生」の設定をちょっと尖らせるためだけの法則じゃなかったから、もしも読了していないのだったら“こんなもの”を読んでいないでさっさと本の方を手に取っていただきたい。

 そもそも、“あの2人”の娘が本当に平凡である筈がないじゃないか。

 

 

2.哀川潤と玖渚家

 

 哀川潤には誘拐の前科がある。

 ついでに、盾の父親・戯言遣いとはどういう出逢い方をしたのか?

 これ以上は語るまい。

 哀川潤に誘拐されてやって来た玖渚城には、玖渚家の人々(あらすじにないので詳しくは言及できないが)が居り、青髪青眼ーーかつての天才だった頃の玖渚友を彷彿とさせるような少女たちとも出会うことになる。

 青色青髪はサヴァンの証。血縁があっても、同じように生まれる確率は低い。元よりあり得ない。

 では何故、かように不可能を可能にしたのかーーそうせざるを得なかったのか?

 それは玖渚盾が誘拐された理由にも繋がるのだが、あらすじの範囲を超える核心部分になるので秘匿事項。双子のうちのある女の子は可愛いとだけ言っておこう。尊いとも。

 

 

3.首なし死体と殺人事件

 

 原点回帰。首を洗って待っていた読者に与えられたのは、首なし死体の殺人事件だった。

 これは戯言シリーズ第1作『クビキリサイクル 青色サヴァン戯言遣い』にて、玖渚盾の両親が巻き込まれた事件と全く同じ状況だ。

 ミステリ用語としてフーダニット、ハウダニットホワイダニットといった文言があるけれど、この作品に関してはシンプルに一つの謎だけを考えれば良い。

 何故、死体の首が切られていたのか?

クビキリサイクル』の時にも、犯人の怨恨や猟奇的な趣味によるものではなく、首を切る行為には意味があった。今作もそう。犯人が首を切った理由がわかれば、犯人の正体も明らかに……。

 なりはするのだが、マジなミステリを期待する読者が居たとしたら「やめとけやめとけ」と言っておこう。

 吉良吉影の同僚のように気安く窘めよう。

クビキリサイクル』から一貫して、西尾維新先生のミステリトリックには穴が大きい。物理的にあり得ない。有り体に言って無茶だ。

 マジにツッコミどころ満載なのだが、作中ではそれがまかり通り真相が解明される。

 ミステリとして成立してしまう。

 だから、西尾維新先生のミステリを読む際は深く考えることはせず、ノリと勢いに任せて読み切ってしまおう。それさえ心得ておけば、読後感は悪くない。

 揚げ足取りという勇み足はせず、地面に大の字になるくらいの鷹揚さを持てば、きっと楽しい読書ができる。

 戯言だけどね。

 

 

 

 

 

 

 はい。という訳で、『キドナプキディング 青色サヴァン戯言遣いの娘』の感想を西尾さんの文体っぽく書いてみました。

 唐突に雑学を披露したり、似た音の言葉を重ねたり、句をリフレインしたりするのは大変ですね。最近では、特に仕事において、正確な意味を簡潔に纏めることが多いので、書いてみると更に冗長さを感じました。それが癖になるかくどく感じるかで、好みが分かれるところです。

 西尾さんの近作は正直つまらなくて離れかけていたのですが、今作は中々面白かったです。まだまだ勢いは失われていないぞというところを見せていただけました。

 今作の主人公の玖渚盾ちゃんはとても魅力的ですね。やばい両親や周囲に対して普通であろうとしているものの、彼女のパーソナルにも中々ツッコミどころがあって面白いです。年下好きは父親と真逆ですが、身体の頑丈さ、メイド好きや人の言うことを聞かないところは父親にそっくり。

 加えて、平成では奴隷だったあの子が令和では盾ちゃんのシッターさんになっていたエピソードも微笑ましかったです。令和でも奴隷は流石に不味かったのでしょう。平成ならノープロブレムという訳でもありませんが。

 そんなこんなで、戯言シリーズの過去と未来と現在に触れられて、とても楽しい読書でした。

 これを書き終えた後で、また最初から再読してみようかと思います。

 

 ではでは、今回はこの辺で!

楽しみなことを楽しめますように

 こんにちは、モンブランです。

 明けましておめでとうございます(激遅)。

 大晦日から三が日にかけて仕事だったので、今年は正月感が皆無でした。世間とのギャップがすごい。

 今も仕事が割と深刻なレベルで忙しいので、ぶっちゃけブログに書くネタがないのです。仕事のグチやら事件やらピー(自主規制)やら、その辺だったら書けそうなんだけど、クビが飛ぶので無理ですね。個人間の通話とかだったら、ある程度までは喋れるんですけど。本当、ある程度までは。

 自分のTwitterで軽く振り返ってみても惨憺たる有り様。

 現状が絶望的なので、希望のある(かもしれない)未来のことを考えてみましょう。

 

 

1.ゲーム(ロックマンエグゼアドバンスドコレクション)

 

 

 以前にも書きましたが、ロックマンエグゼの移植版が今年発売されることになりました。

 発売日は4月14日(予定)。バチコリと予約してあるので、あとはただ待つのみ。

 ……なのですが、ただ待っているのも何なので、GBAのエグゼ1をこっそりやり直していました。一応ストーリーはクリアしたものの、チップ埋めはまだ全然です。ここ最近アクションゲーム自体やる機会が少なかったので、笑えるほど下手くそになっていました。攻撃パターンも1ともなると流石に覚え直さないといけませんし。

 Switchでプレイする前の良いウォーミングアップにはなっていると思います。

 シリーズ全作収録されているので、オラ、ワクワクすっぞ! 多分3BLACKからやります。

 

 

2.小説(キドナプキディング 青色サヴァン戯言遣いの娘)

 

 

 まさか戯言シリーズの最新作が読めるとは思わなかった! しかも最強シリーズの時から存在が示唆されていた、戯言遣いと玖渚友の娘が主人公とあっては期待大です。

 ……最近の西尾維新さんの作品は勢いがなくて離れつつあったのですが、既シリーズの作品だったら大丈夫だよね?というのが今の心境です。りすかの最終巻も面白かったから、きっと大丈夫でしょう! うん!

 多分読み終わったらまた感想も書くでしょうが、ただトリックや犯人特定への過程が無茶なだけの、西尾さんの悪いところの出たミステリになっていないことを祈っています。

 マジでお願いします。

 

 

3.アニメ(推しの子)

 

 

『推しの子』のアニメが春から始まります! みんな、絶対(ぜってー)見てくれよな!

 はい。アニメ化そのものは意外ではなかったのですが、初回90分スペシャルとかなりの力の入れようなので、1巻から読み続けてきた原作ファンとしても結構楽しみにしています。多分初回でアイ編をやり切るのかなーという予想。ただ、何クールで原作のどの辺までをアニメ化するのかがまだわかりません。先へ先へ続くストーリーなので、ちょうど良い区切りが難しそうです。

 ともあれ、アニメもそうですし、作品周辺が盛り上がってくれるのも嬉しく思います。

 原作もまた物議を醸す展開になっていますが、一体どうなるんだろうね?

 

 

 

 さてさて、いかがだったでしょうか?

 マジで“今”の話ができませんでしたね。仕事だよ。仕事が全て悪いんですよ。今の劣悪な状況を抜け出せる有効な手立てがないので、あとはもうお祈りするのみです。

 どうか楽しみなことを楽しめる余裕ができますように。

 

 ではでは、今回はこの辺で!

 あいるびーばっく!

終わる終わる詐欺を許して

 こんにちは、モンブランです。

 暦は12月になり、早くも2022年も終わろうとしていますね。

 ……え、本当に?

 ついこの前まで誕生日じゃなかったっけ? サマポケやってなかったっけ? 秋なんて季節はないから知らないけど、もう12月なんですか?

 大人になると年月が過ぎるのを早く感じると、散々聞かされてきましたが、マジで早いんですね。

 この感覚については、以前『チコちゃんに叱られる』で扱われていて、確か「大人になるとトキメキが減っていくから」みたいに言っていたと思います。

 もう少し丁寧な言い方をすると、子供は物事に疑問や関心を持つことが多いのに対して、大人は既知のものとしてスルーしがちなため、心の動く動かないに差が出てしまう。心が動かないまま時間だけは過ぎるから、結果として時間の経過を早く感じるのだということです。

 なんて悲しい結論なんでしょう。

 こうならないためにも、トキメキ、いやTOKIMEKIをエスカレートさせていかねばなりませんね。

 

 

 閑話休題。今回は2022年の最終月なので“終わり”の話をしたかったんでした。

 物事を終わらせるのはとても難しい。

 延いては物語を終わらせるのは無理に等しいです。

 僕の大好きな漫画『銀魂』もWJで完結できず、ジャンプGIGAでも終われず、スマホアプリでようやくピリオドを打てたという逸話があります。

 アニメも『完結編』と銘打った劇場版が上映されたのに、素知らぬ顔でテレビアニメが再開して、原作の最後も映画化されました。

 以上のような経緯を指して、終わりが近いことを明言しつつも中々終わらない「終わる終わる詐欺」と言われていました。

 あるいは、西尾維新さんの〈物語〉シリーズもそうかもしれません。元々『化物語』で終わるところを『傷物語』『偽物語』と続き、シーズンを重ねてファイナルシーズンを終えてもオフシーズン、モンスターシーズンと続いていく始末。流石にモンスターシーズンの最後では次回予告も打ち止めにはなりましたが。

 

 

 どうして終わる終わる詐欺が横行してしまうのか。

 商業的な都合もあるでしょうが、それ以上に広げた風呂敷を畳む難しさがあると思います。

 伏線を張って回収するのが物語の常で、創意工夫を凝らすのが書き手の愉しみなのですが、同時に己に課してしまう試練でもあります。キャラが増えたり、展開の規模を大きくしたりすると、盛り上がる反面回収すべき伏線も増えてしまいます。おまけに、スポットライトを当てるキャラが多ければ多いほど話を増やさざるを得ず、気づけば締めるべき最終回が遠のいてしまうのです。

 間延びしてつまらなくなってしまったという声も少なくないですが、沢山読めて嬉しい、作者も読者も納得いくまで書き切って欲しいという意見もあります。

 …………きちんと管理すれば良いよね、という正論通りに行かない現実を、どうか「詐欺」なんて言わずに温かく見守ってください。

 

 

 

 どうしてここまで終わる終わる詐欺を擁護してきたのかと言いますと、拙作『兄妹シリーズ』が今年中に完結せずに、“来春完結予定”まで延びてしまったからです。

 正直「『兄妹シリーズ』を最新話まで読んでるやついる?いねぇよなぁ!」とは思うものの、伏線を張った以上は回収したいという責任感の欲求からは逃れられませんでした。

 居ないとは思いますが、完結を楽しみにしてくれている方には本当に申し訳ないです。書くべきイベントはあとひとつだけなので、もう少しだけお付き合いくださいませ。

 

 

 

 さてさて、いかがだったでしょうか。

 先日、宮崎駿監督最新作についての発表がありました。

 

 

 宮崎監督も引退宣言を何度も出しつつ撤回して、作品を世に送り続けている方です。老いや身体の衰えがあっても、死ぬまで映画を作り続けたいのではないかと、僕は勝手に思っています。

 今回のブログを通して言いたかったのは、「晩節を汚す」なんて言わずに「終わり良ければ全て良し」としましょうってことです。

 多分今年最後のブログになると思いますので、色々まとめてご挨拶を。

 

 ハッピーメリー良いお年を!

 

 すっ……↓

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小さい秋見つけたかった。

 こんにちは、モンブランです。

 近頃は「女心と秋の空」とか「秋茄子は嫁に食わすな」といった文言はあまり聞かなくなりましたね。男女平等の観点から行くとアウトなのでしょうか。元々意味を聞いてもあまりピンと来ていなかったので、正直言って全く問題ないのですが、その代わりにもっとウィットに富んだ慣用句が産まれてくれないかなぁと思う今日この頃です。

 尤も、流行語と違って慣用句になるには長く日常で使われなければならないので、新語が長生きしづらい今日では難しそうではありますが。

 

 さて、今回はたまにはブログらしく、日記らしく、オンタイムなことを書こうかなあと思います。

 諸説ありますが、今は秋です。

 後夏でも前冬でもなく秋です。

 秋と言えば、取ってつけたように「〇〇の秋」が数多くありますので、乗っかれる時に乗っかっておこう、「〇〇の秋」というスタイルでちょびちょび書いていきます。

 

 

 

 

1.読書の秋

 

 オメーいつも本読んでばかりじゃねえか。というツッコミもとい事実を無視するところから始めましょう。

 シャドバのグラマス登頂がようやく終わったので、読書に割ける時間が増えました。おかげで積読消化も順調です。

 ちょっとだけ、最近読んだ新刊の話をしましょうか。

 

 

米澤穂信『栞と嘘の季節』角川書店

 

ベストセラー『本と鍵の季節』(図書委員シリーズ)待望の続編!
直木賞受賞第一作

猛毒の栞をめぐる、幾重もの噓。

高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門。
ある放課後、図書室の返却本の中に押し花の栞が挟まっているのに気づく。
小さくかわいらしいその花は――猛毒のトリカブトだった。
持ち主を捜す中で、ふたりは校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見する。
そして、ついに男性教師が中毒で救急搬送されてしまった。
誰が教師を殺そうとしたのか。次は誰が狙われるのか……。
「その栞は自分のものだ」と噓をついて近づいてきた同学年の女子・瀬野とともに、ふたりは真相を追う。
直木賞受賞第一作は、著者の原点とも言える青春ミステリ長編!

 

 前作『本と鍵の季節』も読んでいて、何となく続編ありそうだなと思っていたら本当に出ました。

 引きが引きだったので、堀川と松倉はどうなるのかと思いきや、普通にコンビ再結成していました。元々一定の距離のある二人だったので、少しの歩み寄りで戻ることができたのかもしれません。

 で、あらすじは上記の通りですが、題にもある通りみんなが嘘を吐きます。嘘にも色々あって、偽りを言う嘘もあれば、知っていても言わない誤魔化しもあります。結果的に一番騙されるのは読者の我々なのではなかろうか。

 ……ネタバレなしで書くのが難しい。王道をゆく米澤穂信テイストなので、文体は読みやすいけれど、読み方はビターです。

 結末について、前作以上に突き放した終わり方なので、モヤっとした方も少なくないのではないでしょうか。

 リドルストーリーとはまた少し違いますが、短編ではなく長編なので、終わりまで続けた物語の決着はもっと明確にした方が良いと思いました。

 Amazonのレビューもチラッと覗いてみたのですが、展開が平坦でつまらないと言った声がありました。わからなくはないのですが、淡々とした中に潜むものを探すのが米澤さんの作品の醍醐味なので、その点ではとても楽しめる作品でした。

 

 

 以上、「晴れの日も雨の日も本を読みたい。」出張版でした。

 他にも、最近何故か自分の中で山田風太郎ブームが再燃していて、違う本を挟みつつまた読んでいます。

 山田風太郎作品は時代小説と歴史小説の違いを明確に示してくれます。山田作品が歴史小説だったら、過去の日本は人外魔境過ぎます。史実に基づきつつ、ぶっ飛んだことをやってくれるのがとても楽しいのです。

 最近読んだのはこの辺です。

 

 

 

 

魔界転生』『警視庁草紙』も読みたいのですが、まだ手に入っていないのでまた近いうちに。

 ……秋らしいタイトルが一つも挙がっていない気がするものの、読む本まで無理して秋に寄せる必要はないので大丈夫。

 読みたい本を読むのが精神衛生上よろしいのです。

 

 

2.食欲の秋

 

 食べるものも量も、季節に大して左右されません。休日は一人だとラーメン屋に吸い込まれがちで、たまにポテトを食べては「加蓮」ツイートをして悦にいる。

 しかし、秋は特別です。

 秋はモンブランの季節。僕の季節。我が世の春いやさ秋なのです。

 コンビニでもモンブラン風スイーツが多く見られ、よく食べ比べをしています。

 特にお気に入りはファミマのマロンフラッペで、週3くらい?のペースで飲んでます。最近会う度に飲んでるとか言う方も居るのですが、流石に大袈裟です。通勤路にファミマがあるのが悪い。

 他にも、もう終わってしまったのですが、ミニストップの蜜いもソフトも美味しかったです。

 この辺のメニュー、常駐してもらえないでしょうか?

 いつもあったら、いつも買いますから。

 

 

3.コロナの秋

 

 間に挟めばシリアスみが薄れるかと企んでいたものの、そもそも秋関係ないですよね。

 実は10月末に同居中の父がコロナ陽性になりまして、それに伴い僕と母も濃厚接触者になってしまいました。

 当然我々は自宅待機となり、父はその日の内にホテル隔離になりました。

 一番大変だったのは初日でした。家のあちこちを消毒しなきゃいけないし、外出を最低限に抑える為に買い出しをまとめてやっておかなければならないし、父のホテル隔離が決まってからその支度の手伝いもしましたし。

 ホテルへの移動手段は当然タクシーは使えないので、僕の車で送って行きました。しかもその際、車を密閉空間にしないために全座席の窓を全開しなければならず、夜風をモロに受けながらのドライブは結構キツかったです。

 家の消毒もどこに居たか触ったか単位で気にしなければならず、歯ブラシなども処分しました。

 この一連の作業があって初日は大変だったのですが、以降は実質休暇でした。めっちゃ本読んでました。もっとゲームやっておけば良かった思うものの今となってはもう遅い。

 かように呑気に過ごしていられたのは、僕も母も熱が出ず症状もなく、おまけに僕は抗原検査キットを2回やって2回とも陰性だったからです。

 現在のルール上、自宅待機の期間は2、3日目に抗原検査で陰性ならば4日目に仕事復帰できることになったので、めでたく、めでたく(?)復帰しました。

 ちょうど仕事が忙しい時期だったので、同僚からは「おかえり」と言ってもらった後に「地獄へようこそ」と添えられました。自宅待機を継続したくなりました。

 ちなみに、父も隔離中に症状が悪化することはなく、隔離期間も終えて完全回復しています。

 関係各位ご心配をおかけしました。

 第8波も来ると言われておりますので、気を付けないといけませんね。

 僕もようやく4回目の接種券が届いたので近日中にワクチンを打ちに行く予定です。

 

 

4.スポーツの秋

 

 特になし。次。

 

 

5.芸術の秋

 

 芸術で真っ先に連想しやすい絵、自分の描いた絵の話をして、何なら画像も貼ったりしてみたかったのですが、今回はありません。

 久しく絵を描いていなくて、すっかり画力が退化してしまっています。

 この前、デジ絵チャレンジすべくタブレット用のペンを購入したのですが、専用アプリを使いこなせず早々に心が折れてしまいました。どなたか介護していただけないでしょうか。

 という訳で、紙からリハビリすること現在進行形です。

 自作『兄妹シリーズ』の最新章のメインキャラを描こうかなと思っています。キャラデザは頭の中で明確に出来上がっているので、アウトプットできるだけの画力を取り戻したいです。

 近日中に上げられたら良いな。

 乞うご期待。

 

 

6.アニメの秋

 

 アニメの秋というか秋アニメの話。

 今期は久しぶりに視聴するアニメが多いです。

 

ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン

・ぼっち・ざ・ろっく

SPY×FAMILY

後宮の烏

 

 ジョジョ6部はキャラクターやバトルの駆け引きは面白いのですが、いかんせんプッチが敵を送り込んでくるのが遅延行為に思えて、展開のスピード感に欠けるのが難点です。

 でも見ちゃうんですけどね。「あのキャラの声優さんは誰だろう?」とか「アナスイの声そんなに酷いことになってないやんけ!」とか、面倒臭いファンムーブをしています。

 とは言え、エンポリオの声が種崎敦美さんなのでそんなに心配してません。

「愛と復讐のキッス」もめっちゃ良かったし。

 

 ぼざろは今期の覇権アニメです(断言)。

 話とキャラが面白い、声優さん合ってる、音楽最高。優勝です。

 ついでに、「ぼっち・ざ・らじお!」も面白くてヘビーリスナーになっています。珍しく「にじらじっ!」よりも聴いているかもしれない。

 12月に発売されるアルバムもかなり前向きに購入を検討しています。とてもとても欲しいんだけど、その時期は出費が嵩むのでまだ予約に踏み切れていないんですよね。

 ぼざろのお陰で毎週が楽しみです。

 終わってしまった時のロスのケアは今のうちから考えておかなければならないかもしれません。原作を再読熟読すれば良いかな。

 

 SPY×FAMILYはサザエさんのような安心感で見ていられます。

 2クール目なので改めて語れることは少ないのですが、全てが上手くハマっている良作です。

 強いて言えば、原作はもう少し物語を前に進めて欲しいなーと思うのですが、それはさて置き。

 先日職場で先輩からアーニャアメを貰って、普通に美味しかったです。社会現象になっていると言っても過言じゃないのか、それともウチの職場が特殊だからなのか。諸説ありますね。

 

 後宮の烏は原作小説を読んでいた流れで見ています。ぶっちゃけB〜C級のアニメだな、他に見てる人が周りに居ないな、という実感はあるものの、普通に見ていて面白いです。

 ただ、作中で特殊な読み方、呼び方がされることが多い作品なので、アニメだけ見ている人には字幕がないとわかりづらそうです。

 例えば、「ウレンニャンニャン」と言われても「?」となるでしょう。漢字にすると「烏漣娘娘」です。こうすれば、粗筋を理解していれば意味も通るでしょう。

 原作小説は終盤にかけて物語の軸がズレていってしまったのが難点でしたが、アニメで放映されるであろう範囲は面白いと思います。

 興味を引く言い方ができていないのは承知の上で、もし興味があってお暇があれば見てみてください。

 

 

 

 

 さて、いかがだったでしょうか。

 色々と半端な季節でも、意外と書くことがありましたね。

 童謡のような、あるいは童話のような叙情的なものは沢山取り零しているような気がしますけれど、まあ良いじゃない。

 俗物だって良いじゃない。

 大人なんだもの。

 ではでは、今回はこの辺で!

小ネタを集めてみた(5)

 こんにちは、モンブランです。

 仕事の方が繁忙期でないにも関わらず忙しくて、疲れもするしイライラもするしで、まあまあ荒れた日々を送っております。

 ようやくその出口が見えて来て、またこうしてブログにも着手することができました。

 が、他にもやりたいことが盛り盛り山盛り美肌盛りなので、ストックしていた小ネタでまたお茶を濁したいと思います。

 来月から本気出す。

 

 

 

1.お風呂の話

 “上は洪水、下は大火事、これなんだ?”という定番のなぞなぞがありますよね。勿論答えは“お風呂”なのですが、令和のキッズたちからは「え、どうして大火事なの?」と思われてしまうのではないでしょうか。

 かく言う僕も火を使ったお風呂に入ったことはなく、精々知識として五右衛門風呂を知っているか、バラエティ番組でタレントがドラム缶風呂に入っているところを見るくらい。あとは、トトロのサツキとメイの家も薪のお風呂だったでしょうか。

 時代や形式が変わっても変わらず、お風呂に入っている時間は心身共に落ち着ける貴重なひと時です。

 同時に、入浴中に悩んでいたアイデアを思い付いたりもするので、物書きとしても結構大事な時間でもあるんですよね。

 老後は温泉地で隠居したい。

 

 

2.ボケとツッコミ

 ある時あるお方からこういった指摘を受けました。

「(本名)さんって、ツッコミやすいボケをしてくれるよね。誘導されてるみたい」

 軽い調子で言われたものの、こちらはまあまあ重い衝撃を喰らいました。

 いざ言われてみると心当たりしかありません。恐らく「気になり過ぎて夜しか眠れない」みたいな、そういう類のボケでしょうね。この場合は、夜を昼に訂正するか、「夜眠れていれば十分だろ」と返すしかありません。

 ツッコミやすいボケは、ともすれば掛け合いを構築しやすく処理に困らないのかもしれませんが、その反面、冒険がないのが難点です。

 予定調和の“お約束”も繰り返し続けた先にあるのはマンネリズムです。

 かと言って、処理に困るボケを放出されて微妙な空気にされるのも迷惑です。僕は一応その辺を意識しているつもりなので、ツッコミやすいボケになりがちなのかもしれませんが。

 ならば、どうすれば良いのでしょうか?

 ……本当、どうすれば良いのでしょう?

 自分でも決定打となる回答を持ち合わせていなくて、精々ボケの手数を増やしてマンネリを避けるくらいしか思いつきません。

 今後も考えてみたいので、読んでいる方も考えてみてください。

 これを書いている行為自体が、処理に困るボケになっていないことを祈りつつ。

 

 

3.『四畳半タイムマシンブルース』を観たぜ!

 とてもオモチロイ映画でした。おしまい。

 というのも味気ないので、もう少しそれらしい感想を。

 原作小説を既に購入&既読なのは当ブログの別ページをご覧いただければ分かるかと思いますが、更に『四畳半神話大系』の文庫をかなり久しぶりに再読してから、今回の映画に臨みました。

 改めて四畳半メンバーの阿呆な振る舞いを見ていて実家のような安心感を覚えつつ、テンポの良いストーリー運びで退屈なシーンは一つもありませんでした。

 起伏の激しいプロットもそうですし、独特な映像表現もあって、改めて映画で観る甲斐があったと思います。

 坂本真綾ファンとしてはやはり明石さんに注目していましたが、ビジュアルの美しさもさることながら、堂々としたポンコツぶりが素敵でした。

 さらに、「私」に送り火見物に誘われた直後のリアクションも良かったです。普段あまり感じさせない人間味があって、ある種神格化された乙女が降りて来てくれたような、そんな吃りっぷりでした。

 特典小説も、本当は初週のものも欲しかったのですが、台風関係で6連勤させられたせいで叶わず、歯痒い思いをさせられました。そうでなくても、後味の良い作品なので、機会があればまた観たいと思わせてくれる映画でした。

「成就した恋ほど語るに値しないものはない。」とは言うものの、そこに至るまでのドタバタを思い返してクスリと笑うのは、決して唾棄すべきものではないでしょう。

 

 

4.『霊媒探偵・城塚翡翠』を観よう!

 サムネネタ、もとい時事ネタ。

 以前ブログでも書いた城塚翡翠のシリーズのドラマが10月16日(日)の22:30から放送されます。

 僕は普段こういう類のドラマはあまり視聴しないのですが、「主演・清原果耶」の文字を見て目の色が変わりました。

 実を申しますと、『おかえりモネ』以来、僕は彼女の大ファンなのです。

 彼女のインタビューを目当てに初めて小説誌を買うくらいには……まあ、そちらは読みたい小説も幾つかあったからなんですが、それはさておき。

 どんなにキャストが良くても脚本次第で超駄作になる例を割と最近見たばかりなので、不安はあるものの、こればかりは始まってみないとわかりません。

 絶対とは言いませんが、もし多少なりとも興味があれば、ぜひ観てみてください。

 原作からして面白い仕掛けのあるストーリーなので、観て損はないと思います。

 

 

 

 さてさて、いかがだったでしょうか。

 ここ最近本当に忙しくて小ネタのストックも不足気味でした。

 綴る日常が労働や、その疲労でぶっ倒れている時間に占められるのは不愉快ですね。

 が、やはり身体が資本なので休める時には休んでおきましょう。

 今日の日はおやすみ。

 また会う日まで。

晴れの日も雨の日も本を読みたい(11)

 こんにちは、モンブランです。

 先日、金曜ロードショーで『耳をすませば』をやっていましたね。青臭いラブストーリーと、夢に直向きな雫と聖司の姿は、見ていて恥ずかしさを覚えつつも憧れてしまいます。

 特に、雫と聖司の出会うきっかけになった図書室の貸し出しカード。今はもう完全にバーコードで統一されていて、見ることはなくなってしまいました。僕も使っていたのは小学校の頃まででした。ひょっとしたら、貸し出しカードを使っていたギリギリの世代だったのかもしれません。安易に「昔は良かった」とか言うつもりはありませんが、不便を愉しむ面白さもあったと思えば、何故か救われた気分になります。

 

 

 さて、今回は久しぶりに最近読んだ本の話をしたいと思います。ノンジャンルで。

 

 

1.町田そのこ『宙ごはん』小学館

 

 

この物語は、あなたの人生を支えてくれる

宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。

 

 町田そのこさんと言えば、本屋大賞受賞作でもある『52ヘルツのクジラたち』が有名ですが、僕はこちらの方が好きでした。

 物語は一章ごとに主人公の宙が成長していき、取り巻く環境が変わるごとに視野も拡がっていきます。

 憧れや尊敬の対象だった大人たちも、実はそれぞれに問題を抱えていて、弱さを持つ存在であること。そうして見えてきた現実が、宙にとって決して優しくはないこと。それでも、寄り添い、理解して、折り合いを付けていく宙たちの姿がとても印象に残りました。

 中でも、宙の実母の花野の後輩の佐伯(こうして書いていて違和感すごいので以後は『やっちゃん』で)はとても重要な役割を担っています。

 彼も花野に対して叶わない恋心と恩義の混ざった複雑な感情を抱いていますが、宙に対しては純粋な愛情を持ち、彼女の為に作る“宙ごはん”が物語を好転させる鍵を持っています。

 全体を通して、「渡鬼か?」と思うくらいに厄介な出来事が舞い込んできて、正直に言って読む方も疲労感を覚えるほど。

 そんな苦しい時に、大事な人とごはんを食べることと、その時間の大切さを思い出させてくれる起点が、やっちゃんでした。

 よくある美味しいごはんを食べて癒されるような日常系ストーリーを期待していたら絶対に痛い目を見ると思いますが、それでも時間と機会があれば是非読んでみて欲しい作品です。

 ちなみに、本編を読み終わったら必ずカバー裏の特典小説も読みましょう。ある人物がどんな思いで宙に接してきたかを窺うことができますから。

 

 

2.アタモト『タヌキとキツネ8』リラクトコミックス

 

 

(1巻あらすじ)

話題作、ついに書籍化! ! 50ページ以上の描き下ろし!

ちょっぴりぬけてるタヌキと、ちょっぴりいじわるなキツネ。
お山で暮らす2匹はとっても仲良し。

ほっこり癒やされるフルカラーコミック!
描き下ろしもいっぱい!

 

 綿密に組まれたストーリーを読むのも良いけれど、たまには頭を空っぽにしてクスッと笑えるような作品を読みたくなることもありますよね。

 この『タヌキとキツネ』は癒しを求めて時々読んでいる、大好きな漫画です。

 キツネについて、あらすじには「ちょっぴりいじわる」と言われていますが、1巻の表紙にもあるように定期的にカチカチ山ネタでタヌキをいじめたりと、まあまあブラックなネタもあります。しかし、なんだかんだでタヌキとずっと一緒に居るので、ツンデレなのかもしれません。

 タヌキはとにかくマイペースです。色々突拍子もないことをやったり、オオカミに懐いたり(⁉︎)、そう考えると多少辛辣なツッコミを受けても問題ないんじゃないかと思えてきました。

 いずれにしても、可愛さは正義です。

 Twitter発の漫画なので、当然作者さんのTwitterからも読めますので、そちらもオススメです。

 

 

 

3.『建築知識2022年8月号』エクスナレッジ

 

 

縄文から江戸時代、貴族・武士の館・寺院から庶民の住まいまで!
日本の建物と町並みの歴史を徹底解説

 

 まず最初に誤解を解いておきますが、僕は建築関係の仕事に就いてはいませんし、今後そちらの業界に勤めることを想定して勉強してる訳でもありません。

 僕はこの『建築知識』を資料として購読しています。時々。毎号買ってはいなくて、目ぼしい内容の時だけ買っています。なので、持っているのはこの2022年8月号と、2021年12月号、2022年5月号だけです。

『建築知識』には建築史や、建築についての基礎的な知識や名称が絵や図と一緒に書かれています。

 この8月号は“日本の家と町並み”がテーマで、縄文時代の竪穴式住居から江戸時代の大名屋敷まで幅広く取り扱っています。

 縄文時代は流石に懐かしむのは難しかったものの、平安時代や江戸時代は小説や文学作品で読むことが多く、文章だけではわからなかった当時の建築関係のものの名前を知ることができて面白かったです。

 これは偏見なのですが、授業中に教科書の隅っこに書かれたコラムや絵を見るのが好きだった人に、特にオススメです。良い具合に知識欲を満たしてくれます。

 

 

 

4.ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』創元推理文庫

 

イギリスの小さな町に住むピップは、大学受験の勉強と並行して“自由研究で得られる資格(EPQ)"に取り組んでいた。題材は5年前の少女失踪事件。交際相手の少年が遺体で発見され、警察は彼が少女を殺害して自殺したと発表した。少年と親交があったピップは彼の無実を証明するため、自由研究を隠れ蓑に真相を探る。調査と推理で次々に判明する新事実、二転三転する展開、そして驚きの結末。ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、イギリスで大ベストセラーとなった謎解き青春ミステリ!

 

 おまけに、現在進行形で読んでいるこの作品を。

 評判が良く以前から読みたかったものがようやく手に入ったので、忙しい社畜の時間の合間を縫って読んでいます。紙幅にして約3分の1くらい。

 創元推理文庫というコテコテの推理小説のレーベルから出ている割に、文体と内容はヤングアダルトに近く、すいすい読むことができます。

 また、自由研究という体裁を取っているため、ピップを中心とした小説パートと、ピップが記録を取って関係者にインタビューするパートとに分かれています。

 容疑者とされ自殺した少年から、その関係者に至るまで、ピップ自身に近しい人物ばかりなので、彼ら彼女らを疑うことに苦悩する場面も目立ちました。また、彼女自身も客観的な判断ができていない自覚もあります。

 警察の捜査が一通り終わってしまっているものの、時間の経過と関係者に近しい立場から、ピップのインタビューで意外にも新たな事実が浮かび上がってきて、ページを捲る手が捗ります。

 繰り返しになりますが、今読んでいる最中なので、どういう結末を辿るのかはわかりません。探偵役のピップがとても感情移入しやすいキャラクターなので、彼女と一緒になって考えながら楽しく読み進めていきたいと思います。

 

 

 

 さてさて、いかがだったでしょうか。

 まだ完全に暑さは引いてはいないものの、そろそろ読書の秋も近いことですし、「折角だから」という魔法の呪文と共に何か読んでみたら良いと思います。

 僕は平常運転で充分かなぁと。……本当は仕事の方が落ち着いてくれたら、もっと読書に時間を割けるのに。

 そんなこんなで、今回はこの辺で!

有名作家への入り口、或いは読書感想文のお供に。

 こんにちは、モンブランです。

 夏休みの宿題の定番の一つはやはり読書感想文ですよね。

 僕は普段読んでいる本から適当に選んでチャチャっと書き上げていましたが、普段本を読む習慣のない人にとっては、読まされる上に書かされるという正しく苦行だったことでしょう。

 さらに、その前提として本を選ぶ作業がありますね。課題図書から選ぶのもアリですが、ぶっちゃけた話、年度によってかなり当たり外れがありますから、自由に面白い本から選びたくなる人も少なくないはず。

 そこで、面白い本を求めていると、「面白い本≒売れている本」という図式が世に蔓延っている為、自然と有名作家の作品に偏りがちになるような気がします(僕自身の意見ではありませんが)。

 が、有名作家たちの殆どが多作で、「とりあえず最新刊を……」と手に取ってみてもシリーズ物の一冊だったりして、切り良く一冊を読みたいという需要に答えてくれないこともしばしば。

 そこで、今回は有名作家の作品の中でも、作品が一冊(もしくは上下巻)で完結するような、手に取りやすいものを紹介してみたいと思います。

 

 

東野圭吾さん

 

『時生』講談社文庫

 

 

「あの子に訊きたい。生まれてきてよかった?」
悩む妻に夫が語る、過去からの伝言

不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、20年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った――。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。

 

 ベストセラーランキングで名前を見ない時はないであろう、売れっ子作家の東野圭吾さん。僕も東野圭吾さんの著書はほぼ全て読んでいるくらいにはファンです。

 ガリレオシリーズや加賀恭一郎シリーズなど、映像化した人気シリーズもありますが、今回みたいな趣旨で紹介したい作品で真っ先に思い浮かべたのは、この『時生』でした。ちなみに、『白夜行』も東野圭吾作品を語る上では欠かせないのですが、文庫版でも鈍器のように分厚いボリュームなので、今回はパス。

 まず、若い頃に息子と会ったことがある、という語り出しからして面白いですよね。勿論、ドラえもんセワシくん(息子じゃなくて孫の孫だけど)と違って、時生は若かりし頃の拓実に自身が息子であることを名乗れる筈もなく、そもそもどうして時生は過去の父と対面することになったのか。

 そんな不思議が付き纏いつつ、拓実と共に突然姿を消した、彼の恋人・千鶴の行方を追うことになります。

 ……これは冒頭でわかることなのでネタバレにはなりませんが、時生の母にして現在の拓実の妻の名前は麗子。千鶴ではないのです。

 この時点で、拓実はもしも行方不明になった千鶴を見つけたとしても、千鶴と結ばれることはないことが読者にはわかります。

 それでも読んでいて惹きつけられるのは、謎を追うプロット運びの巧みさと、若い頃の拓実の成長にあると思います。加えて、拓実と時生のやり取りも面白いですね。若い頃の拓実にとっては、素性が謎に包まれている筈なのに親しみを覚えてしまう時生少年は良き相棒となっていましたし、若い頃は恋人の脛を齧っていたクズ野郎だった父を目の当たりにした息子・時生の心情は想像に難くありません。

 読後感の良さも相まって、とてもオススメな作品です。

 

 

 

 

宮部みゆきさん

 

 

(上巻)

北は瀬戸内海に面し、南は山々に囲まれた讃岐国・丸海藩。江戸から金比羅代参に連れ出された九歳のほうは、この地に捨て子同然置き去りにされた。幸いにも、藩医を勤める井上家に引き取られるが、今度はほうの面倒を見てくれた井上家の琴江が毒殺されてしまう。折しも、流罪となった幕府要人・加賀殿が丸海藩へ入領しようとしていた。やがて領内では、不審な毒死や謎めいた凶事が相次いだ。

(下巻)

加賀様は悪霊だ。丸海に災厄を運んでくる。妻子と側近を惨殺した咎で涸滝の屋敷に幽閉された加賀殿の祟りを領民は恐れていた。井上家を出たほうは、引手見習いの宇佐と姉妹のように暮らしていた。やがて、涸滝に下女として入ったほうは、頑なに心を閉ざす加賀殿といつしか気持ちを通わせていく。水面下では、藩の存亡を賭した秘策が粛々と進んでいた。著者の時代小説最高峰、感涙の傑作

 

「上下巻もあるじゃねーか!」というツッコミは呑み込んで、まあちょっと聞いてくださいよ。

 宮部みゆきさんも著書が多く、有名シリーズもあって絞るのがとても難しかったです。尚且つ、現代ミステリでデビューした宮部さんは、ファンタジーや時代小説など様々なジャンルで活躍されているので、余計に一作品を選ぶのが難しかったです。

 が、敢えてここは、慣れていない人は尻込みしそうな時代小説の中から紹介させてください。

『孤宿の人』は流刑となった加賀殿が、丸海藩に入領する前後から物語が始まります。流刑になったとは言え、幕府の要人ゆえに丁重に扱わなければならないという、所謂厄介払いを丸海藩は押し付けられた訳です。

 琴江の毒殺から端を発して藩内の凶事が続くのと同時期だった為、「加賀様が災厄を運んでくる」という声が人々から上がりますが、勿論そんな訳がありません。穏やかな暮らしの中に隠された悪意が噴き出しただけのことで、火種のないところに火の手は上がらないのです。

 ここまで読んでいるととても暗い話のように思えますが、宮部みゆきさんの作品は必ず最後に救いのあるものが多く、『孤宿の人』もその例外ではありません。

 ほうの名前を漢字にすると「呆」。「阿呆」の「呆」です。こんな酷い名付け方をされた上、捨て子同然で丸海藩に置き去りにされた彼女は、さらに慕っていた琴江を殺され、置かれていた井上家からも出なければならないという、これでも不幸続き。けれども、ほうは作中で誰よりも純粋な心とものの見方を持っている為、それに救われる人々も居ます。

『孤宿の人』は様々な視点で物語が進んで行きますが、その中でも最も“弱い”ほうのことも念頭に置いた上で、読んでみて欲しいです。

 時代小説は言葉が難しそうで読めない、と感じる人は騙されたと思って、冒頭の「海うさぎ」と「波の下」の章だけでも読んでみてください。ページを捲る手を止めたくなくなっている筈ですから。

 宮部みゆきさんという物語の名手が巧みに綴る人間の罪深さと優しさを、食わず嫌いせずに堪能してみてください。文末の児玉清さんの解説も併せてオススメです。

 

 

 

 

 

 いかがだったでしょうか。

 本当はもっと多くの作家の作品を取り上げる予定だったのですが、二人だけで息切れしてしまいました。

 今後書くかどうかはかなり怪しいので、せめて作家名と題名だけでもリストアップさせてください。

辻村深月『凍りのくじら』

上橋菜穂子『鹿の王』

森見登美彦夜は短し歩けよ乙女

伊坂幸太郎アヒルと鴨のコインロッカー

池井戸潤空飛ぶタイヤ

司馬遼太郎項羽と劉邦

 あくまで、僕が思う“有名作家への入り口にちょうど良い作品”なので、異論は多々あるでしょう。それらを否定する気は毛頭ありません。各々の出会いと、自身との嗜好の一致があって然るべきですから。

 肝心なのは「出会い」があることそれ自体

 このブログがどんな人にどれだけ読まれているかはわかりませんが、より多くの方の読書の「出会い」になってくれれば幸いです。

 

 ではでは、今回はこの辺で!