モンブランは静かに暮らしたい。

静かに暮らしたいのに、好きなことの話をすると静かでなくなってしまうブログです。

晴れの日も雨の日も本を読みたい(2)

 こんにちは、モンブランです。
 お久しぶりです。生きてます。ちょっと精神的に元気じゃなくて、あんまり筆を取る気になれていなかっただけです。
 文章を書く人間にとって、自分の書くものが面白く思えない状態ってかなりの苦痛ですよね。人にどうこう思ってもらえるよりもまず、自己評価という検閲をクリアーしてくれないと世に出せません。……ブログも記事を2、3個は完成した文をボツにしてました。いずれ復活させたい。

 という訳で、まだ完全復活というほど切れ味を取り戻せていませんが、また最近読んで面白かった本の話をしながら調子を戻していきたいと思います。

 

1.森谷明子『千年の黙 異本源氏物語創元推理文庫

 

千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)

千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)

 

 

 行方不明になってしまった帝ご寵愛の猫。いつの間にか欠けていた『源氏物語』幻の巻「かがやく日の宮」。これらの謎を『源氏物語』の作者紫式部が探偵役として解き明かしていく物語です。
 光源氏など有名な登場人物で知られる『源氏物語』ですが、この作品でスポットが当てられているのは後に紫式部と呼ばれる香子です。彼女自身の“物語を作る力”と“物事を広く深く見通す知性”が、彼女に仕えるあてきの視点で描かれています。
 推理小説としてはいわゆる“日常の謎”を取り扱っていて、平安当時の様子を丁寧にわかりやすく描写されつつ、香子が鮮やかに謎を解きます。対人間の駆け引きや黒幕との直接対決など、ミステリの美味しい部分もしっかりと味わえる作品です。
 登場人物たちも個性豊かで、香子を支えて小侍従から後に堤の屋敷の管理を任されるまでに成長する阿手木(あてき)や、短い出番ながらも香子だけでなく読者を魅力する知性と可愛らしさを持つ中宮彰子、敢えて触れていない“あの方”など。
 歴史物と聞いて尻込みしてしまう方も多いかもしれませんが、現代語でとてもわかりやすく書かれているので多くの人にオススメしたい作品です。
 ……ちなみに、創元推理文庫は他の文庫と比べるとやや高めなので中古を探していたのですが、版が少ないためか中々見つからず、先日続刊も含めてようやく手に入れることができました。
 今は続編の『白の祝宴 逸文紫式部日記』を読んでいるところです。『源氏物語』よりもかなりマイナーな『紫式部日記』について触れている作品なので、ウキウキ読んでいます。
 ご興味があれば是非。

 

2.米澤穂信『いまさら翼といわれても』角川文庫

 

いまさら翼といわれても (角川文庫)

いまさら翼といわれても (角川文庫)

 

 

 アニメ化もされた古典部シリーズの6作品めの短編集です。結構有名な作品なのであまり丁寧に概要を紹介する必要はないように思います。
 ほとんど感想だけ書き散らしますね。
 まず、以前作者が『遠まわりする雛』で言及していたように、さらに今作では作中における時間の経過が描かれていましたね。
「鏡には映らない」では、摩耶花がふとしたきっかけで折木の過去の行いについて疑問を抱き、その真相を探る話です。が、以前の彼女だったらそもそもこの話は成立しません。折木に対してそこまで関心を持つほど仲が良くなかったからです。しかし、これまで古典部としての活動を距離が近づき彼のことを理解できるようになったからこそ、折木が汚名を被ってでもある女子を助けた真相にたどり着いたのだと思います。
「長い休日」では、折木のモットー「やらなくていいことはやらない。やるべきことは手短に」という省エネ主義になったのかが書かれていて、読んでいて切なくなりました。彼の長い休日を終わらせてくれるのは、「わたし、気になります!」と彼を引っ張り回す彼女でしょう。間違いない。
「いまさら翼といわれても」。表題作を読んだ時の感想は、「え、続きは︎」でした。先ほど少し触れた『遠まわりする雛』では千反田の家業を継ぐための進路の決意が語られていましたが、今作で彼女は……。図らずも“翼”を得てしまった彼女はどうなるのでしょう。
 米澤先生、続きを早く!

 

3.上橋菜穂子『鹿の王 水底の橋』角川書店

 

鹿の王 水底の橋

鹿の王 水底の橋

 

 

『鹿の王』に続きが出ると思ってませんでした。続編の主人公は医師のホッサルです。流石にヴァンとユナで話を続けるのは難しいだろうなぁとは思いましたが(というかもう彼らはそっとしておいてあげて欲しい、事件に巻き込まないであげて欲しい)。
 天才医師のホッサルは相変わらずの巻き込まれ体質で、今回は対立する2つの医術から果ては次期皇帝争いにまで巻き込まれます。災難と言えばそれまでですが、ホッサルと共に読者の僕たちも読んでいて考えさせられることが多々ありました。
 純粋に医療だけを極めても人は助けられない。時に医療以外のもの(人を動かす政治力や権力)が必要になることもある。それでも、持てる力を全て使って人を助けることが何よりも尊い
 目まぐるしい展開でページを捲る手が止まらない忙しい読書でしたが、とても重厚なメッセージ性のある物語を堪能できました。
 ミラルとの身分差のある恋にも一応の決着を付けることができていて、前作からの読者としてホッとしました。恋愛のジャンルにも身分差ものがありますけれど、本人たちからしたら溜まったものじゃありませんからね。良かった良かった。

 

 

 いかがだったでしょうか。
 書いているうちにテンションが戻ってきた感じがします。やっぱり好きな本の話をするのは楽しいです。
 ただ、あまり本の話ばかりしても芸がないですね。音楽遍歴の話にもまだ続きがありますし、熱弁したいゲームの話もあります。
 今後ともお付き合いいただければ嬉しいです。
 ではではっ。